米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設に反対する抗議者を制止した警備員が令和6年、ダンプカーに巻き込まれ死亡した事故で、沖縄県警が5日、重過失致死容疑で抗議者の女(74)の書類送検に踏み切った。女の姉は今年5月、事故を報じてきた産経新聞記者を名指しで批判。過去には抗議者側が産経新聞の報道を「でっち上げ」などと主張することもあった。
「ブラック記者が沖縄に来て、悪いことをどんどんやっている。(防犯カメラの)映像がぼけているが、この中で『妹が警備員を殺した』、そういうキャンペーンを張っている」
同県浦添市内で5月16日に開かれた集会。出席者によると、女の姉はこう発言し、事故当時の状況を映した防犯カメラ映像を入手し、6年10月に映像の中身を報じた産経新聞と那覇支局所属記者を名指しで批判した。
事故から約1カ月後の6年7月。名護市安和(あわ)の事故現場で、サングラスをかけた「普通の市民」を名乗る女性が、拡声器で「産経新聞はでっち上げ!」と声を張り上げているのが目撃された。
記者に何が「でっち上げ」なのか問われた女性は「産経新聞は『車道に飛び出した市民』(と書いた)。ここが間違い。でたらめ」と主張した。だが、この時点で産経新聞は「飛び出した」とも「すり抜けた」とも報じていなかった。
事故現場で「牛歩」による抗議活動をしてきた団体のメンバーによると、書類送検された女は事故直後、「あえて飛び出したわけではない」と説明。この団体と連携する「オール沖縄会議」は同年7月、警備員と女がダンプカーに巻き込まれたのは「車両乗入部」と呼ばれる歩道部分で、「あくまでも歩行者の通行が優先される場所」だったと主張する資料を公表した。
オール沖縄会議は、事故原因が防衛省沖縄防衛局が辺野古「新基地」建設工事を急がせるために業者に無理を強いたことにあると主張。沖縄防衛局長と面会し、「あなたは沖縄県民を一人殺してしまった責任者だ」となじる団体関係者もいた。
だが、産経新聞が同年10月、事故現場付近の防犯カメラ映像を入手し、報道したことで、こうした抗議団体側の主張に疑問符が付くようになる。
映像には、警備員の後方から足早に近づいてきた女がダンプカーの前に出て、制止しようとした警備員が女とダンプカーの間に割って入る形となり、そのままひかれる様子が映っていたためだ。
報道の反響は大きく、産経の記事を紹介するX(旧ツイッター)のインプレッション(閲覧数)は1000万を超えた。
この映像は、報道翌日に開かれた県議会土木環境委員会でも閲覧された。事故現場の道路管理者は沖縄県で、安全対策を審議するためだった。
しかし、玉城デニー知事を支える「オール沖縄」系の議員5人は「映像の出所や内容も曖昧だ」などと反発し、閲覧を拒否。委員長への不信任動議まで提出した。
玉城知事自身もかたくなに映像を見ようとせず、安全対策に生かそうとする姿勢はみられなかった。のみならず、玉城知事はその月の定例記者会見で「捜査中の証拠になり得るものは、報道を差し控えるべきではないか」と、映像を報じた産経新聞を批判。「映像が(報道機関に)提供されたことは由々しき問題だ」との認識を示した。
映像という客観証拠に背を向け続ける玉城知事らオール沖縄側の姿勢は、自らの「主張」が揺らぎかねない「不都合な真実」が露見することを恐れているかのようでもあった。
現場では事故前から、事業者側が「抗議者が事故に巻き込まれないようガードレールを設置してほしい」と何度も要請していた。だが、沖縄県は「歩行者の横断を制限することになる」としてかたくなに拒み、事故で人命が奪われた今も設置を認めていない。
県警が女らを書類送検したことで捜査にも区切りがついた。防犯カメラ映像の閲覧を拒否した玉城知事らは速やかに映像を閲覧し、現場の安全対策に生かすことが求められる。(那覇支局長 大竹直樹)