セクハラ認定を受けた前市長の辞職に伴う福岡県田川市の出直し市長選は5日、告示される。一騎打ちだった前回選から一転、前市長や元市長、新人3人の計5人が無所属での立候補を表明。主要政党に表立った支援の動きがないのは同市長選では異例で、混戦に拍車がかかっている。投開票は12日。(小山田昌人、梅野健吾)
「改めておわび申し上げる。(市民との)約束を実現し続けていくことで、信頼を回復したい」。1日夜、市内で開かれた公開討論会。立候補予定者5人が顔をそろえた中、市民から一連の問題を問われた前市長の村上卓哉氏(55)は厳しい表情で陳謝した。
市の第三者委員会が5月、元秘書の女性職員に対する行為をセクハラと認定し、村上氏は来年4月までの任期を残し、5月31日付で辞職した。各地で謝罪を重ねながら、「初心に戻る」と訴えている。
前県議の佐々木允氏(45)は一般女性との不適切な関係を理由に昨年4月に県議を辞職した。「5000軒のおわび行脚」を行った中で急浮上した市長選に、後援会の後押しを受け、立候補を決断。「結果を出すことで損なった信頼を回復したい」と話す。
不祥事が大きな話題となっていることに加え、急な選挙と候補者乱立を受け、主要政党は推薦を出していない。過去50年の資料によると、主要政党の推薦を受けない候補だけで市長選が行われれば初となる。
田川市は自民党の武田良太・元総務相(衆院福岡11区)の地盤。これまでの市長選では武田氏の動きが影響してきたが、今回は党の地元組織が自主投票を決め、特定の候補を支援する動きは表立っては見られない。社民党も自主投票を決定。立憲民主、公明党なども推薦を出さず、日本維新の会は組織として関与しないという。
旧産炭地の筑豊地方では保革といった明確な対立軸で選挙が争われることが多く、今回のように混沌(こんとん)とした構図は珍しい。
過去3回の市長選で自民などの推薦を受けてきた元市長の二場公人氏(69)は、地域の顔役や同級生らによる「勝手連」の支援を受ける。前回選で村上氏に敗れた二場氏は「緊急事態なので即戦力が必要。(市政を)立て直すには私しかいない」と語る。
村上氏の辞職前に立候補表明していた元学習塾経営の浦野仁氏(31)。2025年の参院選で地域政党「再生の道」から全国比例で立候補し、落選後に同党を離れた。SNSを積極的に活用し知名度向上を図り、「田川の新時代を築く」と意気込む。
立候補表明が最も遅かった今永信之氏(68)は田川広域観光協会事務局長などの経歴を持つ。
同市長選に5人が立候補した場合、これまでの4人を上回り、戦後最多となる。
暴言・サウナ持ち込み・学歴詐称…明暗分かれる出直し選
不祥事などで辞職したり、議会の不信任決議で失職したりした首長が信を問う出直し選。各地で続投の是非が争点となってきたが、明暗は分かれている。
武蔵野大の三村憲弘教授(政治行動論)は「有権者は選挙の原因となった不祥事が、その政治家の行政能力や政策実現にどう関係するかを考え、判断する傾向がある」と指摘。不倫は行政手腕とは別と捉えられる場合もあるが、ハラスメントや金銭が絡むトラブルは組織運営などに関わるとして問題視されやすいという。「有権者は地域がどうあるべきかを軸に判断するのが望ましい」としている。(饒波あゆみ)