〈高市自民・新たな火種〉「ウラ金はもう片付いたから…」安倍派5人衆・世耕氏復党に参院自民が猛反発…“二階王国”を崩した男に「政治家以前に人として信じられない」

維新肝入りだった衆院議員の定数削減法案の今国会成立を見送る方向で調整に入り、皇室典範の改正と副首都関連法案の成立を目指す高市早苗首相。与野党が対立し、審議が停滞していた国会は正常化に向かっているようだが、足元の自民党内には新たな不満の種も生まれつつある。
【画像】 “二階王国”崩壊の引き金に…世耕弘成氏に敗れた三男・二階伸康氏

それが、裏金問題で離党していた世耕弘成元経産相の復党をめぐる問題だ。地元の和歌山県連とは「和解」した世耕氏だが、党内では相変わらず復党を快く思わない勢力がいるようで……。
首相の座をねらい衆院への転出を目指すも、立ちはだかってきた大物
「安倍派5人衆」と呼ばれた5人のうち、現役衆院議員である西村康稔選挙対策委員長、萩生田光一幹事長代行、松野博一組織運動本部長、世耕弘成元経産相。この4人の中で唯一、自民党籍に戻れていないのが世耕氏だ。西村氏、萩生田氏、松野氏は党中枢に返り咲き、党内でも「裏金問題の禊は済んだ」という雰囲気が漂っているが、世耕氏だけは選挙で有権者の信任を得たにもかかわらず、党本部の判断はいまだ示されていない。
その背景には、裏金問題発覚以降の世耕氏の行動に対する、地元・和歌山県連からの反発があった。世耕氏はもともと参院議員を長く務め、安倍政権で官房副長官や経産相などの要職を歴任。「将来の首相候補」を自負し、歴代首相が誕生してきた衆院への鞍替えを目指してきた。
ただ、そんな世耕氏の前に立ちはだかっていたのが、当時自民党内で圧倒的な力を持っていた二階俊博元幹事長。世耕氏がこだわった地盤は二階氏の選挙区と重なっていたため、いくら世耕氏が安倍氏の側近といえども、鞍替えがかなわなかったのだ。
そこで、世耕氏は和歌山県内で二階氏が絶対的な力を持つ状況を打破しようと、2022年の和歌山県知事選ではキャリア官僚の擁立を画策。だが、二階氏が国民民主党の衆院議員だった岸本周平氏の擁立を進めると、県内の首長らが軒並み岸本氏を支持。キャリア官僚は撤退を余儀なくされた。
「二階氏は岸本氏に対し、『各自治体の首長のもとを2回でも3回でも回って挨拶してこい』と命じ、早くから岸本氏も実践していた。世耕氏側は足元にも及ばなかった」(旧二階派議員)
裏金問題による離党を逆手に取り、“二階王国”に反旗
そうしたなかで2023年の暮れ、安倍派の裏金問題が明るみに。世耕氏を含めた5人衆の責任は重いとされ、世耕氏は離党。大きな政治的ダメージを負ったかに見えたが、無所属となった状況を逆手に取った世耕氏は、長年の悲願であった衆院転出を目指して2024年10月、衆院選に出馬した。
このとき、世耕氏の前に立ちはだかってきた二階氏も自身の派閥の裏金問題の責任を取るとして引退。三男の伸康氏が自民党公認候補として出馬した。
伸康氏は「地元の市長選で落選した長男よりは評判がマシだったため二階氏の後継となったが、それでも『偉ぶっている』などと地元有権者から言われていた」(自民関係者)こともあり、知名度や実績のある世耕氏が完全勝利。伸康氏は比例復活もできない惨敗だった。
その後も世耕氏は“二階王国”の復活を許さなかった。2025年の参院選では、伸康氏が再び出馬したが、世耕氏は自身に近い無所属・望月良男氏を支援し、望月氏が勝利した。
こうして世耕氏が二階氏側に“完勝”を重ねたことで、公認候補の勝利を世耕氏に阻まれてきた和歌山県連も“降伏”する。県連は7月3日、世耕氏と、今後の選挙協力などをめぐる「確認書」を交わしたと発表。国政選挙や首長の選挙などで世耕氏が全面的に協力、支援することなどが盛り込まれた。かつて“二階王国”と呼ばれた和歌山県政界で、二階氏側の影響力低下が改めて浮き彫りになった瞬間だった。
高市首相と距離のある自民参院、二階派には不満も
地元・和歌山県連とのしこりも表向きは解消され、党本部は世耕氏の復党をめぐって検討に入る。そもそも高市首相も世耕氏には恩があり、高市氏の総裁選出馬の際には世耕氏が参院の旧安倍派の票をとりまとめていたとされる。さらに、世耕氏が理事長を務める近畿大学では、落選中の高市氏が教鞭をとっていたこともあった。
そのため、「世耕氏の復党の道筋は整いつつあり、自民党に戻れる可能性は高いとみられている。場合によっては夏~秋の党役員人事で、そこまで重要ポジションでなくても役職に就く可能性もある」(全国紙政治部記者)
ただ、そこに「NO」を突きつけたのが、世耕氏の古巣、参院自民で影響力を持つ石井準一氏だ。石井氏は世耕氏について、衆院選で自民公認候補と戦ったことなどから「政治家以前に人として信じられない」と語るなど激しく反発。
「石井氏はもともと、参院で大きな影響力を持ってきた旧平成研(直近は茂木派)の出身。だが、安倍氏に近い世耕氏が大きな顔をしてきたのが気に入らなかった。参院内に自身のグループを立ち上げるなど着々と参院の重鎮としての地位を築きつつある今、世耕氏が古巣の参院にも影響力を与えるのを恐れているのだろう」(自民参院関係者)
さらに、衆院選で伸康氏を支援していた旧二階派議員の胸中も複雑だ。
「衆院選や参院選の際、伸康氏の応援には小林鷹之氏など旧二階派の面々が駆けつけていました。旧二階派は今も二階氏を『親分』と慕う議員が多く、彼らにしてみれば、二階氏の秘書も務めていた伸康氏を惨敗させた世耕氏の存在は、決して面白くありません」(旧二階派関係者)
旧安倍派ベテランからは「党内の処分も受け、選挙でも当選し、裏金問題はもう片付いたのだから、通常の処遇に戻してほしい」との声も上がる世耕氏の復党問題。ただ、一方で高市首相と距離がある石井氏や旧二階派の一部は苦々しく思っており、しこりは残ったままになりそうだ。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班