インターネット上の匿名投稿で名誉を傷付けられたなどとして、被害者が投稿者情報の開示を求める裁判の申し立てが、2025年に初めて1万件を超えたことが最高裁のまとめでわかった。2年間で2・5倍に増えた。SNSでの中傷など悪質な投稿が後を絶たないことが背景にある。
新制度で手続き容易に
ネット上では長年、自らの氏名を明かさず、虚偽や私生活を暴露する情報を書き込んだり、著作物を無断で拡散したりして、他人の権利を侵害する投稿が問題となっている。最近でも、サッカー・ワールドカップ北中米3か国大会やミラノ・コルティナ五輪で選手を中傷する投稿が相次いだ。
プロバイダー責任制限法(現・情報流通プラットフォーム対処法)は、匿名投稿の被害者が、投稿者の情報開示を裁判所に求める権利を認め、投稿者を特定して損害賠償を求める手続きが設けられている。
従来は、▽SNS事業者などへの裁判を申し立てて投稿者のIPアドレス(ネット上の住所)を特定▽それを基にプロバイダー(接続業者)に氏名や住所などの情報の開示を求める――の2段階の手続きが必要だった。22年10月施行の改正法で、裁判所に1回裁判を申し立てれば、SNS事業者とプロバイダーに同時に開示を求められる新制度が加わった。
被害者による手続きが簡単になったことで申し立てが促されたとみられ、最高裁によると、新制度に基づく開示の申立件数は、23年の3959件から24年に6779件と1・7倍となり、25年は1万72件に達した。2年間で2・5倍に増えたことになる。
複数の裁判官によると、中傷投稿に対する申し立てが目立っているほか、動画制作会社が匿名投稿により著作権を侵害されたと訴えるケースも増えている。
裁判の増加は、悪質な投稿が後を絶たないことを示しているとみられ、総務省の「違法・有害情報相談センター」に寄せられた投稿を巡る相談の件数は、25年度までの3年間、6000件超で高止まりしている。
ベテラン裁判官の一人は「匿名投稿による被害の訴えは今後も続くことが想定される。被害救済が滞らないような仕組みを考えていく必要はあるだろう」と話している。