イオンモールの爆発事故で、避難後に従業員らが館内に戻らざるを得なかった様々な事情が取材で明らかになりました。イオン側は「マニュアルの周知を含む運用が徹底できていなかった可能性がある」と取材に答えています。
従業員7人が犠牲となったイオンモール熊本の爆発事故。イオンのマニュアルには、「一旦避難した者は館内に入らない」と記載されているといいますが、実際はどうだったのでしょうか。当時、館内にいた客や従業員に取材すると、自らの判断で店内に戻った人や、イオンモール側のスタッフと思われる人が許可を出していたという証言など、マニュアル通りにはいかなかった実態が見えてきました。
イオンモールに入る専門店の従業員によると、地震発生からおよそ45分後、イオン側から「地震の影響につき以降の営業を中止いたします。従業員さまはお帰りいただいて結構でございます」という帰宅を促すメッセージが送られてきました。しかし、受け取った人の中には館内に戻った人もいたといいます。
店舗従業員(30代)
「メッセージを見てそのまま帰る人もいれば、実際に中に戻った方も数人、結構な数いた。10数名、入っていった」
この男性も自分の判断で館内に戻ったといいます。
――戻らなければいけない理由はあったのですか。
館内に戻った店舗従業員(30代)
「私の車のカギを(取りに)。歩いて帰る選択肢はそもそもない」
イオンモール熊本の近くには駅がなく、男性は車で40分近くかけて通勤していました。自宅に帰るためには、店に戻り車のカギを取りに行く必要があったのです。
館内に戻った店舗従業員(30代)
「事務所の中も結構、水浸しになっていて、コンセントとか扇風機をつけたりしてたので、感電するんじゃないかっていう怖さがありました。電源全部切って、抜けるコンセント(プラグ)は抜いて」
男性は店の安全確認を行い、10分程で外へ出たといいます。
自分の判断で館内に戻ったのは、従業員だけではありませんでした。当時、買い物に来ていた76歳の男性は、地震発生直後に外へ避難しましたが、再び館内に戻ったといいます。
館内に戻った客(76歳)
「冷房の部屋から外に出たので暑くて暑くて。そのままいたら熱中症になるかなと思うくらい暑かった」
その時間帯の熊本の気温は35度の猛暑で、他にも数人の客が館内に戻ったといいます。男性の息子(48歳)も、父親と連絡を取り合う中で館内に戻るよう伝えていました。
息子(48歳)
「わざわざ暑いところに行かなくても、(館内の)涼しいところにいて、と。イオンモール熊本にいるということだったので安心しました。頑丈なイメージがあるし、避難場所になっているので」
しかし、館内に戻った男性は不安を感じ、再び外に出ました。そのおよそ50分後に爆発が起きたといいます。
館内に戻った客(76歳)
「なにか落ちてくるのかなとか、不安になって出ました。下手したら死んでいたかもしれない」
“避難後は館内に戻らない”というマニュアルでしたが、戻ることが許可されていたという証言もあります。当時、1階で働いていた20代のイベントスタッフは、地震発生後に外へ避難し、1時間ほどたった午後5時半ごろ、イオン側が館内に戻ってもいいと言っていたと語りました。
中に戻るのを目撃したイベントスタッフ(20代)
「イオンモール側と思われる方が無線でやりとりしていて、その無線で受けた指示を自分たち避難者に送っていました。『従業員の方で中に貴重品が残っている方のみ中に入って大丈夫です』と言っていて、それ以外の方はみなさん帰ってくださいと指示が出ていました」
この男性は貴重品を持っていたため中に戻らず帰宅しましたが、数名の従業員が戻っていくのを目撃したといいます。同じ頃、別の場所でも、専門店の従業員が「イオンのスタッフから『近くのテナントでまとまって入って大丈夫だ』と」言われたという証言もあります。
こうしたイオン側の判断について、ある専門店の従業員は次のように話します。
専門店の従業員
「地震直後の館内は別になんてことなかった。パッと見る限りどう見ても安全な施設でした。まさか爆発するとは思っていないし、その瞬間の判断としては別におかしなことじゃないというか」
「戻らない」というマニュアルが徹底されていなかったのではないか。イオン側に取材しました。「マニュアルの内容は十分だったか」という質問に対し、イオンは次のように回答しました。
イオン
「マニュアルにおいて、避難後の安全確認がなされるまで再度の立ち入りを認めておらず、当日安全確認完了および再入館を認めるアナウンスはしておりません。ただし、当日は多くのお客さまを避難誘導する中で、現場は混乱していました。テナント従業員による再入館の抑止や周知を含む運用が徹底できていなかった可能性はございます」
また、避難後に館内に戻る専門店従業員がいたことについての見解を尋ねると、次のように答えました。
イオン
「施設の安全確認がなされる前に再入館があったという事実に対し、当社として重く受け止め、その経緯およびイオンモールの運用について、事故調査委員会において検証のうえ、その原因と再発防止策を明らかにしてまいります」
(8月8日放送『追跡取材 news LOG』より)