大阪税関が見つけた中国向け「ニセiPhone」は消費税不正還付の道具だった〈背後に大がかりな偽造グループか〉

兵庫県・神戸市の宝石・貴金属輸出会社「清盛商事」ら3社が正規品を装った模造iPhoneを中国に輸出し、不正に消費税の還付を受けていたとして、大阪国税局が追徴課税(3社で約1億1000万円)したことが報じられた。事件をスクープした朝日新聞記者の市田隆氏が 月刊「文藝春秋」9月号 (8月10日発売)に寄稿し、消費税の不正還付の手口を明かした。
iPhone Pro Max15の模造品、約200台を押収
発端は2025年7月ごろ、関西空港の国際貨物地区で税関職員がX線検査をしていたところ、ある段ボール箱に違和感を抱いたことだった。市田氏は次のように述懐する。
「職員らが段ボール箱を開封して実際の中身を調べる開披検査を行ったところ、正規品とみられる外箱に入った、本物にしか見えないiPhoneだった。しかし、さらに調べると、職員の『違和感』の正体が明らかになる。すべてのiPhoneの中に電子機器類は入っておらず、本物と重量を合わせるための薄い鉄板などを入れた模造品であることが判明した」
押収されたのは、iPhone Pro Max15の模造品、約200台。当時20万円ほどで取引されていた高級機種だが、外箱、ホログラム、シリアルナンバーは正規品のものだったという。
大がかりな偽造グループが背後に関係している疑い
税関は輸出手続きを差し止め、大阪国税局に通報した。消費税の不正還付の疑いがあったからだ。消費税は業者が商品を販売したときに受け取った額から、仕入れ時に払った消費税額を差し引いて納税する。海外に輸出した場合、消費税がかからないため、仕入れで支払った消費税分の還付を受けることができる。この仕組みを業者が悪用したと国税局は判断したのだ。市田氏が続ける。
「消費税の調査に詳しい元国税職員に話を聞いたところ、『精巧な模造品の製作、関連する真正品の大量入手などから、大がかりな偽造グループが背後に関係している疑いがある』と語り、自分の経験でも『消費税の不正還付を生業としている組織が見え隠れすることがあった』と指摘した」
「真正品を輸出したつもり」業者らは騙されたと主張
業者らは、真正品を輸出したつもりであり、騙されたと主張している。だが、極めて疑わしいと言わざるを得ない。市田氏は次のように指摘する。
「取引の内情を知る関係者によると、3社とも真正品のiPhoneを仕入れた実績を示す根拠は乏しく、仕入れ業者も確認できない状態だった。仕入先とされる会社は、東京都内などを所在地とする複数のペーパーカンパニーが介在していた。さらにさかのぼっても、実態のない会社にしか行き着かない」
偽iPhoneの件は朝日新聞が8月5日の総合面でスクープしたが、市田氏による詳しいインサイドレポート「 iPhone、近鉄百貨店…消費税不正を追え 」は「文藝春秋」9月号(8月10日発売)及び、電子版「文藝春秋PLUS」(8月9日公開)に掲載されている。
ペットボトルの水を大手メーカーの高級化粧品と偽って輸出して不正に消費税の還付を受けた事例や、転売目的の中国人による免税品の大量購入で近鉄百貨店など大手百貨店が申告漏れを指摘された事例も紹介されている。
(「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2026年9月号)