近年、お寺や神社などがインターネット上のサイトで売買され、中には非公開の高額取引もあるといいます。取材班は宗教法人ブローカーを直撃。実際に売買する人はどんな人なのでしょうか?住職でジャーナリストの鵜飼秀徳氏とともに“宗教法人売買”の実態に迫ります。
限られた人しか見ることができない、いわゆる裏サイト。そこに書かれていたのは…。
「宗教法人を新規に作れる権利 1500万円」
「岐阜県 相続に最適・指南付き宗教法人 3億円」
「新着宗教法人 札幌市 購入後放置プレイでオーケー」
「北海道 超有名神社 お賽銭収入有。〇〇神社 特別セール5000万円」
「新規でも霊園が作れます。→7月末日までの決済ならなんと6000万円」
売られていたのは、なんと寺や神社や新興宗教です。全国にある150もの宗教法人が、ずらりと並んでいます。なぜ寺や神社などが、ネット上で売買されているのでしょうか。
取材班が向かったのは大阪市内のとあるビル。窓には、『宗教法人 売買 仲介』と書かれています。中には、約7年前から、宗教法人売買の仲介を始めたという男性がいました。
(宗教法人ブローカー・山本隆雄氏)
「売りたい宗教法人を集めてきて、買いたい人をそこにつないで、売りたい・買いたいで成り立って、手数料を取るという感じです。口約束だけの世界なので、現金だけしか扱えない」
やり取りはすべて現金で、領収書も発行しないといいます。
Q.(宗教法人を)売りたい人は、どういう人?
(山本氏)
「後継者がいない人、もしくは、売らされている人です。借金して、その金が返せないから、債権者が『売ってしまえ』ということです」
Q.(宗教法人を)買いに来る人は?
(山本氏)
「納骨堂とか、霊園をやりたい人。一番は節税や脱税です」
信者からのお布施が原則非課税になるなど、税制面で優遇されている宗教法人。それを悪用すれば、脱税やマネーロンダリングにつながる恐れもあります。
(山本氏)
「うちの窓に貼っている貼り紙を見て、『7600万円マネーロンダリングせなあかんから売ってくれ』と言う人もいました。当然、断りました」
山本氏によると、購入目的を確認し、適切に運営するよう指導しているといいます。
Q.売った先で、脱税やマネーロンダリングにつながる恐れはゼロではない。後ろめたさはありますか?
(山本氏)
「ないですね。うちは、まともな人しか来ないんで。買って何しているんでしょうね。持っているだけの人も多い」
(山本氏)
「(宗教法人の売買は)脱法とか言われていますけど、違法ではない。法に触れないんで」
文化庁は、宗教法人の売買を呼びかけるサイトは、違法行為を助長するとしています。実態を把握するため、「宗教法人が売買されていることを聞いたことがあるか」など、アンケートを行っていて、山本氏のもとにも送られてきたといいますが…。
(山本氏)
「回答しましたよ。『宗教法人が売買されていることを聞いたことはありますか?』に『いいえ』とか。別にウソ書いても問題ないでしょ。アンケートですから」
宗教法人法では、法人格を売買されることは想定しておらず、文化庁も手を焼いているのが現状です。住職でジャーナリストの鵜飼秀徳氏は…。
(ジャーナリスト・鵜飼秀徳氏)
「お寺の本来の目的は、宗教行為をするという公益法人ですから。こういう公益を害するようなことに加担するのは、法の趣旨を逸脱している。法に触れてないから、やってもいいことではない。そんなことを言ったら、“脱法ドラッグ”もよいということになる」
一方、寺の売買を巡ってトラブルに巻き込まれた人もいます。
母親のお骨を納めた寺が突然、取り壊され、憤る檀家の男性(90代)。墓が別の場所に勝手に移動させられたといいます。
土地は不動産業者が買い取り、寺を取り壊して更地にし、敷地内にあった墓は、参道の端に移動させられていたということです。
(檀家)
「潰して、建売の段取りをしている。墓は(別の場所に)ダーッと並べとる。相談とかはなく、勝手にやられた」
もともと寺があった場所に案内してもらうと、そこに並んでいたのは、建売住宅です。男性は“墓じまい”せざるを得なくなり、母親のお骨は自宅で保管しています。
なぜ、寺を壊して更地にしたのでしょうか。土地を買い取った不動産業者は、寺を更地にして墓を移動させることは住職に許可を得て、檀家にも説明したとしています。
関係者によると、8000万円以上の借金を抱えていたという寺の住職。不動産業者らが1億5000万円を支払い、寺の代表権や土地などを取得しました。そして墓を移動させ、寺を更地にしたあと、別の不動産会社に約2億1000万円で土地を転売したといいます。その後、別の寺の住職が2700万円を支払い、代表権を引き継いでいます。
寺を売られ、建売住宅が並ぶ一角では、現在、新たな本堂が建設され、代表権を引き継いだ住職らによると、適切な宗教活動が行われているといいます。
(寺を引き継いだ住職の親族)
「一時、お寺の本来の活動を無視した形で、そういう人たちの手に渡って、こういう惨状になってしまったが、そういう人たちの手に渡らないように、お寺の活動・ご本尊とこの場をお守りして、檀家さんの間を取り持ってくださる方に、ここを守っていただくのが、本来の姿なんじゃないかなと」
寺のネット販売に問題はあるのでしょうか?
『宗教法人法第85条』で、宗教活動の自由が保障されています。どのような活動をするかは、各宗教法人の自主的、自律的運営に委ねられています。国が介入できるのは、建物の登記や会計報告の提出など、事務的手続きのみということです。
一方で文化庁は、「売買サイトを通じた取引の一部は、宗教法人を悪用した違法行為を助長する。宗教法人の売買などの行為が無制限に行われることは、避けなければならない」とし、HPでも『税制優遇等を謳(うた)った宗教法人の売買/M&Aの話には御注意ください!』と注意喚起をしています。
鵜飼氏は「目的を持った宗教行為や運営が持続可能だから、国から許認可が与えられている。第三者が介入・運営するなら、許認可の仕組み自体が崩壊する」としています。
Q.信頼の根幹を揺るがす事態ということですよね?
(鵜飼氏)
「そう思います。国際的な金融作業部会という、お金の流れをチェックするところがあるんですが、宗教法人の不正な取引マネーが、結果的に北朝鮮やテロ支援組織に回っているのではないかという指摘もありました。このような宗教法人の“いち売買”の問題ではなくて、国際的な問題になっています」
このような状況を受け、文化庁は宗教法人格の不正利用に関する所轄庁向けのガイドラインを年内にも策定するとしています。
(読売テレビ「情報ライブミヤネ屋」2026年7月17日放送)