「日本のご主人様は誰だ」「ミャンマーに帰す」暴言と威圧の音声データ…特定技能の19歳~30歳の女性に与えた絶望「カビ生えた炊飯器」借金背負う弱みに付け込む悪質実態《連載2》

北海道京極町の農業法人で働く特定技能の19歳~30歳のミャンマー人女性4人が、町議も務める実質的な運営者の親子から暴力やセクハラ被害を受け、札幌市内の教会へ逃走・保護された。現場では野菜の投げつけや下半身を見せつけるなど壮絶な人権侵害行為が横行。ミャンマー人らは暴力や暴言の音声を密かに録音し、被害を告白した。取材班に対し親子は無回答を貫いていたが、事態は外国人労働者全体の受け入れ体制を揺るがす局面へと展開する《HBC報道部 山﨑裕侍 熊谷七海》
▼4回連載の2回目
「日本のご主人様は誰だ!」残されていた暴言録音データと違法な「帰国強要」
「おはようございます」ミャンマー人らが声をそろえて挨拶する。
複数の録音データを聞くと、現場を仕切る60代の父親と40代の長男、次男が彼女たちの挨拶に応える様子はなく、いきなり怒鳴り声が響くことも多い。
「だめだ帰れ」「やる気がないなら帰れ」
親子は日本語での指示がうまく届かないことにいら立ち、ミャンマー人らを威圧するような音声が記録されている。
長男 「日本語を半分も理解してねえ。言われたことしねえんだ。こんな奴はいらない」「今日見ていて、やらないんだったら給料は半分だからな」
父親 「悪い奴は待てないから(ミャンマーに)帰すから、代わりは来るから」
長男 「態度悪い奴には仕事させない」
ミャンマー人を見下したような発言も収録されている。
長男 「バカども、どいつもこいつも、質悪すぎる」 父親 「誰から給料をもらっている。日本のご主人様は誰だ!」
法人の事務所から現場の畑までは、長男らがワゴン車で送り迎えする。
長男 「乗れ!早く、早くといったら走って乗れ、コノ」
別の録音データでは、在留カードやパスポートを取り上げると迫ったり、「ミャンマーに帰す」と脅したりするような発言もたびたび残されている。
父親 「仕事をする気がないなら(ミャンマーに)帰す。ほら、今すぐ帰してやるから。在留カードを出せ、お前の在留すぐ取り返してやるから」 「理解できないなら帰れ、みんなまとめてミャンマーに帰してやるから。インドネシア人でもベトナム人でもお前らの代わりくらいすぐにいる」
特定技能の受入れ機関が外国人のパスポートや在留カードを本人の意思に反して取り上げることは特定技能基準省令(第2条)で禁止されている。また、特定技能外国人を「仕事ができない」という曖昧な理由だけで途中で解雇することは原則として極めて困難であり、法的に認められていない。日本人と同様に判断されることが原則で、労働基準法3条で禁止されている。
高利貸しの借金と家族の生活…「帰れ」の一言が与える絶望
彼女たち4人とも「ミャンマーに帰す」という言葉が一番つらかったと口々に訴える。見下されているという悔しさとともに、彼女たちが背負っているものの重さを通訳のユーさんは代弁した。
「彼女たちはミャンマーにいる家族を背負って日本に来ている。一緒に背負っているのは借金です。日本に来るために、たくさんの借金を抱えているのですが、親戚から借りられればいいのですが、無理な場合、ミャンマーでは銀行から借りられず闇金しかありません。その利子はとても高いです。ミャンマーにいる家族は、自分たちが仕送りしないとご飯を食べられず生活に困ります。ミャンマーに帰れない事情があるのに『今すぐ荷物を用意して帰れ』と追い出そうとする、在留カードやパスポートを取り上げるといってプレッシャーをかける。住んでいる場所から追い出そうとする、不安にさせる。自分たちはいつ追い出されるかわからない。ここを追い出されたら家族に仕送りできない、生活できない。『ミャンマーに帰れ』というのは、そういったたくさんのプレッシャーを一瞬で与えられるような言い方です」(通訳のユーさん)
カビの生えた炊飯器、鍵の壊れた玄関…常に恐怖に怯えた寮生活
ミャンマー人たちが暮らす寮は、一軒家を借り上げたものだ。
その一つは農業法人から歩いて10分ほどのところにある古びた2階建てだ。壁の塗装は剥がれ、外観からも老朽化した建物であることが分かる。
「これから皆さんが住む場所はとてもきれいなところだから、皆さんが家を出るときも、きれいに返さないといけない」と言われていたが、家の中に入った時、唖然としたという。
「室内に炊飯器があったんですけど、中のごはんにカビが生えていました。トイレは紙が詰まってて、使うことができない状態でした。炊飯器、トイレ、バスタブ、全部自分たちで掃除しました」
だが、彼女たちを苦しめたのは建物の古さや汚さ、部屋の狭さだけではない。
「家の玄関の鍵は壊れていました。各部屋も一応扉はあるものの閉まらない状態です。鍵がかからない状態で住まないといけなくて、常に気を張って暮らさなくてはならない。(農業法人を運営する)親子がいつ寮に来るかわからない、いつ怒られるか、いつ触られるか、いつ蹴られるか、いつたたかれるか分からない」
収穫する農作物の大きさをめぐって、父親と長男で指示の内容が違い、怒鳴られることもしばしばあったという。彼女たちにしてみれば、常に怒鳴られ、いつ暴力やセクハラに遭うかわからない日々だった。
Cさん(20) 「その悪い言葉を常に浴びせようと考えてるようにしか思えない」 Bさん(22) 「とにかく何が正解なのかわかんないのが一番つらいことだった」
見せた素顔と母国の味…暴言と恐怖の現場から逃走した女性たちの願い
インタビュー後、彼女たちは私たちにミャンマー料理をふるまってくれた。調味料などは母国から持ってきたという。台所に立ち、楽しげに調理する彼女たちの表情は、まだ20代の若者そのものだ。
教会の礼拝所に即席でできたダイニングには、札幌ではなかなか食べることができないミャンマー料理の数々が並んだ。
HBCは、この農業法人を実質的に運営する父親・長男・次男に直接取材を申し込んだが、8月20日までに取材に応じることはなかった。
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