熊本地震で真夏の「車中泊」相次ぐ、駐車スペース開設で所在把握・見守り強化…「助かった命を必ず守る」

[検証 熊本地震]10年前の教訓<上>
最大震度7を観測した熊本地震は28日で発生から1か月となる。10年の時を経て再び熊本を襲った激震は、38人の命を奪い、4万2000棟を超える住宅に被害を与えた。被災者支援や生活基盤の復旧に10年前の教訓は生かされたのか。課題を検証する。
「体調は大丈夫ですか」。震度6強を観測した熊本県八代市の体育館駐車場で21日夜、一般社団法人「minori」(熊本市)の代表理事・高木聡史さん(58)ら2人が、車中泊の明かりが漏れる車を探しては、窓をノックして声をかけていた。
2016年の熊本地震では、車中泊や避難所での生活で体調を崩すなどして亡くなる災害関連死が、死者278人のうち8割の228人を占めた。建物の倒壊などの「直接死」は50人だった。
団体は「助かった命を必ず守る」として、地震の翌日から毎晩、車中泊の多い道の駅や商業施設を自主的に回り、困り事などを聞き取り飲料水や菓子を配布している。高木さんは「孤立しないよう支援を続けたい」と語る。
4月の発生だった10年前と異なり、今回の地震は真夏に起きた。懸念されたのは、暑さのリスクだ。熊本県は地震当日からホームページなどで熱中症防止の啓発を始め、避難所や給水所にチラシを掲示した。
8月2日には車中泊をしていた同県氷川町の女性が亡くなったことを公表。熱中症だったとみられ、災害関連死の可能性があった。木村敬知事は「酷暑日も予測されていた時期で、被災者に注意を促す意味でも疑いの段階で公表するべきだと判断した」と説明する。
24年1月の能登半島地震でも「余震が怖く室内で寝られない」などの理由で車中泊をする被災者が相次いだ。政府は24年6月、防災基本計画に車中泊への備えの必要性を明記。駐車スペースの事前公表やマニュアルの作成を盛り込んだ自治体向けの手引も作った。
熊本市は今年4月に車中泊避難のマニュアルとガイドラインを策定。これに沿って、今回は地震発生当日から市内2か所に車中泊の駐車スペースを開設した。前回はどこで車中泊をしているのかも把握できていなかったが、今回は避難者の所在を一定程度つかむことができた。
在宅避難者への支援も強化されている。八代市では5日から、85歳以上の高齢世帯や75歳以上の単身世帯を保健師が訪問し、これまでに3000人超の健康状態などを確認してきた。国による調整などで応援保健師の到着が早かったため、前回の地震より半月ほど早くスタートできたという。
22日に訪問を受けた一人暮らしの女性(80)は「誰とも話さない日が続いていたので、心配事を聞いてもらえて少し安心できた」と話した。
災害関連死の疑いがあるのは、27日時点で氷川町の女性ら2人。地震後に命を落とすのを防ぐ取り組みは進んだ。一方で、10年前と同じ光景も繰り返された。