福岡市中心部の天神地区にあり、安くておいしいと一般市民も多く訪れる市役所本庁舎15階の職員食堂(中央区天神1)が2021年3月でなくなる予定となった。市が市役所北別館を同年12月以降に廃止するのに伴い、現在北別館に入る部局を食堂のスペースに移転させる方針を固めたため。30年以上続く食堂の灯が消えることとなり、市民から悲しむ声が上がっている。
10月上旬。正午を過ぎると、市職員らとともに周辺の企業の社員ら一般市民が詰めかけた。「定食以外は中へどうぞ」。入り口付近は注文待ちの行列もできるほどの混雑ぶりで、従業員が声を掛けた。午後0時半過ぎには売り切れる定食も出た。
福岡の都心にありながら日替わり定食は500円で食べられ、カツ丼470円、かけうどんやそばは240円とコストパフォーマンスは抜群。博多湾まで見渡せる15階の眺望の良さもあり、市民からも愛されてきた。食堂を運営する市職員厚生会によると、18年度の1日当たりの利用者は約650人に上る。
しかし存続は危機に面していた。1988年の本庁舎完成とともに設けられ営業を続けてきたが、厚生会が13~14年度に職員への意向調査をしたところ、食堂の利用希望者は1割未満にとどまった。近隣に飲食店があることもあり、厚生施設として職員食堂を続ける必要性がなくなったとして、14年度に廃止の方針を決めていた。
それでも跡地の利活用が固まらないため食堂の営業が続いてきたが、市は今月、市役所北別館を21年12月以降に廃止し、食堂跡は北別館に入る部局などの移転先として活用する方針を固めた。食堂は同月までに改修される予定となり、厚生会の担当者が今月2日、21年3月での廃止を委託業者に口頭で伝えた。
週1回食堂に来るという中央区の男性(71)は「低料金でおいしい。できればなくならないでほしい」と惜しむ。近くで働く女性会社員(64)は「そばもおいしいし、カキフライもおいしい。ワンコインで食べられるところは少ない。楽しみにしていたのに……」と肩を落とした。
委託業者「ランチミッション」の久保野良英代表によると、利益はほとんど出ていなかった。しかし利用者に高齢者も多く、中には週5日訪れる人もいたため、「昼食の場」をなくさないようにと続けてきたという。久保野代表は「お客さんが食事をするところがなくなることが心配。(廃止は)残念で、寂しい」と表情を曇らせた。【杣谷健太】