福岡県議会の「ドン」として君臨し、議会人事や県政を牛耳ってきた蔵内勇夫・県議会議長が辞職した。辞職に至る経過のなかで明らかになったその権力構造には驚きの声も上がったが、実は全国を見渡せば蔵内氏をも上回る権勢を誇り、国会議員すら頭が上がらない地方議員はまだまだいる。彼らが力を持ち続ける理由とは──。
後援会ネットワーク通じて国会議員の当落を左右
なぜ、地方議会にはドンが生まれるのか。現代政治分析論の白鳥浩・法政大学教授が指摘する。
「知事や県庁職員にとっても予算や政策を議会に通す際に、仕切ってくれる議会のドンの存在は都合がいい。そうしてドンは実績を重ねて地位を獲得する。だから多選の議員がほとんどです」
ドンが生まれる地方議会の政治的構造には4つのポイントがあるという。
1つは多選になりやすい選挙制度だ。地方議員の選挙は中選挙区制や大選挙区制が多く、当選ラインが低い。
次にメディアのチェックが入りにくい。政治とカネの問題があっても、地方議員は知名度が低いため、全国メディアではなかなか取り上げられない。
「3つ目は国政選挙への影響力。小選挙区制の衆院選は勝つか負けるかなので手を抜けない。その国会議員の選挙を県議や市議が支える。だから地元では国会議員より県議のほうが影響力を持ちやすく、県議を束ねるドンに権力が集中していく」(同前)
県議や市議などの地方議員は有権者との距離が近く、信号機や通学路の歩道橋をつけてほしいといった地元の細かい陳情などを通じて地域に後援会組織を張り巡らせている。地元有権者や商店、中小企業にとっては国会議員より身近で頼りになる陳情先なのだ。
ドンが国会議員より力を持つのは、そうした有権者に近い地方議員の後援会ネットワークという票田を通じて国会議員の当落を左右できるからだ。
そして4つ目が地方議会のオール与党体制だ。
「地方議会は概ね自民党が万年与党。公明党や旧民主党系の会派も首長の与党になっているケースは多い。だからドンは議会でも追及されにくい。福岡県議会で民主党系県議の半数が蔵内前議長の辞職勧告決議案反対に回り、蔵内氏を守ったのがその好例です」(同前)
無投票当選が多くなる理由
ドンになると無投票当選も多くなる。蔵内氏の選挙区は定数1だが、当選10回のうち7回が無投票当選だった。選挙で有権者の審判さえ受けずに当選を続けてきた。
「ドンは良くも悪くも議会で必要とされ、野党にもにらみが利いている。地元では批判の声を上げにくいし、野党も対立候補を立てにくい。有形無形の社会的圧力で無投票当選になりがちです。おそらくドンはある時点で対立候補を立たせない、選挙をさせない力まで手に入れることができると思われます」(同前)