【消費減税に反対】「避けられないのが財源の問題」自民党公約に“乱”を起こした〈稲田朋美氏〉が真意を激白《必要額は年間5兆円》

自民党内でも異論が噴出する消費減税。減税慎重派の一人が、 稲田朋美衆院議員(67) だ。7月31日の合同会議後、囲み取材で「総裁が言っているからやるというのは、自民党らしくない」と語る姿は大きくクローズアップされた。

稲田氏といえば、今年4月の再審法改正の自民党議論の際、法務省の掲げる方針に強い反対意見を表明したことが“稲田の乱”として注目されたこともある。なぜ党の公約でもあった消費減税に慎重論を唱えたのか。 『文藝春秋』2026年10月号のインタビュー から一部紹介します。
◆◆◆
消費減税ありきの議論
選挙公約では「飲食料品の消費税ゼロ」が掲げられましたが、レジシステムなどの都合上、今回の政府案では「1%」への引き下げとなりました。そのため、引き下げられなかった1%分を、「所得に連動したきめ細やかな給付」の先行導入で補うことで「実質ゼロ」とする方針が定められています。しかも、消費税実質ゼロのためのこの現金給付は、27年4月の消費減税実施のすぐ後、27年6月以降から導入できるそうです。
それならば、そもそも“つなぎ”の措置だった消費減税は行わずに、中・低所得の勤労者向けの給付だけで「消費税実質ゼロ」を達成することもできるのではないか。国民の負担軽減が目的であって、消費減税が目的ではありません。消費減税ありきで議論を進めるのではなく、よりきめ細やかな制度設計について検討するべきではないか──。私は、そのことを申し上げたのです。
もちろん消費減税も負担軽減策の一つではありますが、富裕層も一律に負担を軽減することになり、本当に困っている人たちへの支援策としては効果が薄い。その点、給付にすれば中・低所得の勤労者に的を絞って手厚く対応することが可能となります。選挙後の円安の加速による物価高の現状をみればその方が、より困っている方々に歓迎されるのではないでしょうか。
別の問題点もあります。小売業者の方々からは、「税率変更に伴うレジ改修などの負担が大きく、2年後に税率を戻すとなれば二重の負担になる」との声をお聞きしました。また、年間売上額が1000万円以下の小規模農家は、消費税の納税を免除されており、販売価格に上乗せした消費税分を手元に残すことで、肥料や資材の仕入れの消費税負担分を賄うことができます。消費減税となれば、場合によってはその分の収入が減り、仕入れの消費税は負担の上乗せになります。外食業界では、税率が10%に据え置かれるため、減税によって“外食離れ”に繋がることが危惧されています。また実際の声として、仕入れの食材の消費税が減税されているのなら、価格を下げるよう顧客から言われれば抗えないのではないかと心配する店主もおられました。
財源確保の議論を尽くすべき
そして、何より避けられないのが財源の問題です。
食品消費税を1%にし、中・低所得の勤労者に1%分を給付するためには、年間5兆円が必要だといいます。赤字国債には頼らないとされていますが、具体的な財源は明らかになっていません。財源確保のため、下げ続けてきた法人税を少しもとに戻すことも選択肢のひとつとして検討すべきだと私は選挙中に申し上げていましたが、こうした議論は全くなされていないのが現状です。地方財源の減収にどう対応するかも具体的な議論はありませんでした。
こうしたことも踏まえると、やはり、「つなぎ」に過ぎなかったはずの消費減税が、それありきで議論が進んでいる状況はおかしいと言わざるを得ないと思いました。
一方、すでに党内の議論は結論が出たわけですから、今後、農家や小売り、外食産業への手当、さらには地方の減収への対応を具体的にし、財源を明確にする。加えて2年後に食品消費税を戻すための担保についてしっかり議論を尽くす必要があります。
※この続きでは、 「人権擁護法案」 に異論を唱えた過去を稲田朋美氏が振り返っています。約7100字の全文は、『文藝春秋』2026年10月号と、月刊文藝春秋の電子版『文藝春秋PLUS』に掲載されています(稲田朋美「 消費減税に私か反対した理由 」)。
■稲田朋美(いなだ・ともみ) 1959年、福井県生まれ。早稲田大学法学部卒業後、弁護士として歴史認識問題などに携わる。2005年に衆院選で初当選して以降、防衛大臣や自民党政調会長を歴任した
(稲田 朋美/文藝春秋 2026年10月号)