ルフィ広域強盗事件の幹部は、フィリピン「ビクータン」収容所から日本国内への強盗指示を出していた。それどこまでも”他人事”で、現場で事態が深刻化すると、指示役と実行役の間で醜い責任の押し付け合いが行われていた。
その最たる例が、現金1000万円が狙われた狛江強盗殺人事件である。警察署員を名乗るアポ電で1000万円ものタンス預金を見つけ出した”伝説のかけ子”・山田李沙は、独断で強盗を実行させた。結果として殺人が発生し、幹部たちは焦った。殺人事件の裏側で行われていたやり取りを、ノンフィクションライター・栗田シメイ氏の著書『檻の中のルフィ 闇バイトを生んだ者たち』(講談社)から、一部抜粋して再構成(※文中の被告表記は略)。【全4回の第4回。第1回から読む】
人違いの強盗殺人
「は? そちらの責任ですよね? こっちはやることやってるんですよ!」
指示役と実行役の間で、そんな押し問答が続く。「ミツハシ(注:『ルフィグループ』幹部・今村磨人のテレグラム名)」は、「指飛ばしていいからやれよ!」と叫び続けていた。
突入から撤退までの約1時間44分間、電話は繋いだままであった。実行役たちは、時価にして計約60万円相当の腕時計3点を奪い、逃走した。
被害女性は多発肋骨骨折など複数の損傷を負い、外傷性ショックにより同日亡くなった。
事件後、「キム(注:『ルフィグループ』幹部・藤田聖也のテレグラム名)」から永田(睦人)のもとに電話が入る。
「結局おばあちゃん亡くなりましたよ」
「殺したら警察も本気になる」という理由で、携帯の位置情報を消去するように指示を受けた。永田は「キム」に次の仕事を用意するように懇願した。翌日、「キム」から永田へ次なる案件の概要とともに、誘導するようなメッセージが添えられていた。
「クソイージーです」
「今日は殺さないでくださいね。毎回殺していたらヤバいので(笑) 」
「(指示をしたのは)『ミツハシ』ですよね」
指示したのはそっちだろ━━永田は、「キム」が実行役に責任をなすりつけていると感じたという。
「あー死んだっすね」
今村、藤田、渡邉(優樹)の3人が狛江事件の指示を出している横で、山田は竹の塚警察署の職員を名乗り、「キヨトルーム(注:ビクータン収容所内にあるエアコンが完備された個室)」から足立区にアポ電をかけていた。「地下にカネがあると思うんだよね」「俺なら地下に隠すから」などと彼らが話しているのを傍目に、山田は1000万円のタンス預金の”当たり”を早々に見つけた。長年かけ子をしていた山田は、自宅保管の1000万超の現金を探し当てることがどれほど難しいかを、その場の誰よりも知っていた。