小泉純一郎政権の発足から25年。小泉氏は「自民党をぶっ壊す」の言葉通り、郵政選挙で自民党の反対派議員たちに刺客候補を立てて追放し、道路公団民営化、年金改革、労働者派遣業の大幅規制緩和など行財政改革を推進など日本の政治のあり方や社会を大きく変えた。小泉政治が日本にどんな変化をもたらし、今の高市政治にどう受け継がれているか、小泉氏を長く取材してきたジャーナリストの田原総一朗氏が検証する。
「自民党をぶっ壊す」ワンフレーズの天才
人付き合いの薄さや高い内閣支持率に支えられている点で高市首相と小泉元首相の間に共通点があるとの見方がありますが、全く違うと思います。
国旗損壊罪の創設や皇室典範改正のやり方を見ても、高市氏は自分の支持者向けの政策に力を入れる政治手法で、人事を見ても、好き嫌いや損得で動く姿勢が明白です。
これに対して小泉氏は、これから日本はどうあるべきかを考え、従来型の政治を刷新する構造改革を実行した政治家でした。
小泉氏を長く取材してきた私からすると、彼はワンフレーズの天才でもありました。2001年の総裁選では「自民党をぶっ壊す」とぶち上げ、2005年に郵政民営化法案が参院本会議で否決されるや、「殺されてもやる」と解散に踏み切った。
馴れ合いが当たり前だった永田町に、独特のワンフレーズを放ちながら「本気の喧嘩」の緊張感を持ち込んだのが小泉政治でした。
実際、小泉氏の向こうを張る、亀井静香氏のような政治家も出てきた。彼らはテレビに生出演しては激しく議論したが、両者は国家像をめぐる応酬を交わしており、相手が憎いわけではないと伝わっていました。
今、高市自民と対峙する野党に欠けているのは、こうした国家像をめぐる大局的な議論ではないか。
加えて小泉時代と違うのは、SNSの発達です。支持率が高い高市氏を批判すると、袋叩きに遭うから、政治家はもちろんジャーナリストまで本音を言えない。国民にとって不幸なことですよ。
小泉氏の功罪に話を戻せば、自民党の中身を変えたことでしょう。
党役員や閣僚をめぐる派閥順送り人事とは決別しました。派閥からの推薦を一顧だにせず、トップ自ら人材を一本釣りする小泉流が、その後は当たり前になりました。
政治とカネをめぐる状況も小泉以後、大きく様変わりしました。かつては敵対派閥を取り込み、あるいは野党議員に手心を加えさせるためにカネが飛び交いましたが、小泉政権を境に完全に過去のものとなった。
首脳外交で言えば、ブッシュ(米大統領)と蜜月と言われた小泉政権でさえ日米は対等とは言えなかったけれど、高市政権では、さらに対米追従の傾向が強まっています。
もちろん、これまでトランプと話ができたのは安倍晋三・元首相ぐらいですから、この穴を補えない人材不足の面もあります。それも高市政治の特徴の一つかもしれませんが。
【プロフィール】 田原総一朗(たはら・そういちろう)/テレビ朝日系『サンデープロジェクト』や『朝まで生テレビ!』などで司会を務める。小泉氏との関係も深く、著書に『それでも、小泉純一郎を支持します』(幻冬舎)など。
※週刊ポスト2026年10月9日号