著作物でなくても「バンドスコア」模倣に賠償責任 最高裁初判決

著作物ではないバンドの楽曲を耳でコピーして作った楽譜(バンドスコア)の模倣行為に賠償責任が生じるかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(三浦守裁判長)は9日、「賠償責任が生じる」との初判断を示した。賠償の対象にならないと主張したウェブサイト運営会社の上告を棄却し、約1億7000万円の賠償を命じた2審判決が確定した。
裁判官4人全員一致の意見。最高裁は2011年、著作権法で保護されないものの無断利用には「特段の事情」がない限り不法行為は成立しないとの判例を示している。小法廷はウェブサイトでのバンドスコアの模倣版の公開は、自由競争を阻害して「特段の事情」に該当すると判断した。この判例に基づき最高裁が賠償責任を認めるのは初めて。
録音現場で演奏しながら作曲されるバンド楽曲は完全な楽譜が存在しないことが多い。そのため、多大な労力をかけて音源を「耳コピ」して書き起こす「採譜」が必要となる。日本音楽著作権協会(JASRAC)の許諾を得てバンドスコアを制作・販売する原告の出版社「フェアリー」(東京)は、模倣版の公開で売り上げが減少したとし、5億円の損害賠償を求めて提訴した。
小法廷は、著作物でないものの無断利用に賠償責任が生じる「特段の事情」はどういった場合かを検討し、自由競争の範囲を逸脱して営業上の利益を侵害した場合との基準を初めて示した。11~18年に579曲分のバンドスコアが模倣されたことから、運営会社は顧客を奪う重大な悪影響をフェアリーに与え、不公正な手段で営業の継続を困難にしたなどとして「特段の事情」に該当すると結論付けた。
1審・東京地裁判決(21年9月)は出版社とサイトで公開された楽譜には相違点があることから、模倣自体認めずフェアリーの請求を棄却。これに対し2審・東京高裁判決(24年6月)は模倣を認めて運営会社側に賠償を命じていた。【安元久美子】