高市早苗首相とは、1993年の衆院選で当選した“同期”である田中眞紀子元外相(82)。現在の高市氏への思いを語った。
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ガラリと環境を変える才能
最近、よく主人と話すのは、高市さんはちゃぶ台返しをして環境を変えるのに長けているということです。
たとえば2月の解散総選挙です。高市さんをめぐっては昨年末、旧統一教会との関係が取り沙汰されました。教団本部の韓鶴子総裁への報告書の中に高市さんの名前が32回記載されていたことや、教団との関わりが深い「世界日報」に5回登場していたことが明らかになり、国会でも追及されていました。その矢先、高市さんはパッと解散した。解散する必要性は一切無かったにもかかわらず、です。
9月の内閣改造についても同様です。そもそも、それまでの閣僚たちが何か取り返しのつかない失敗をしたわけではないのに、なぜ内閣改造をする必要があったのでしょうか?
皇室典範改正や消費減税などで、党内で異論の声が上がってガチャガチャしてきた頃合いで改造されると、閣僚になりたい議員たちは一斉に口を噤む。改造には、議員心理を引き締める効果があるんです。解散にしろ改造にしろ、そうやってガラリと環境を変えることができるのは、彼女の才能かと思います。
高市さんは“普通の人”
ただ、人心掌握がうまくいっているかと言われると、必ずしもそうではないようです。私は今でも閣僚経験者や現役閣僚と食事をすることがありますが、現役閣僚でも、結構文句を言っていますよ。「本当にやりたいことなんて無いくせに」って。聞いているこっちが、閣僚から外されないか心配になるくらい(笑)。
改造にあたってアンケートで人選を決めたというのも、彼女が党内に仲間がいないことの裏返しだと思います。高市さんには、この議員立法を実現させたという実績が思い当たりません。議員立法って、国会に法案を提出するには衆議院で20人以上の賛成者が必要なので、自然と仲間ができるんですよ。でも、そういう活動を彼女がやっているのは見たことがない。仲間がいれば、どの議員が何の政策に強いのか、おのずと分かるはずです。そうした党内ネットワークがないから、わざわざアンケートに書いてもらう必要があったのでしょう。
高市さんは人柄は良い人だけれど、“普通の人”でもあると思います。その印象は、初めて会った時から現在も変わっていません。防衛や外交、安全保障や社会保障など、何の分野に強いのかもはっきりしない。「この分野は彼女じゃないと」というものが何もありません。
加えて、彼女からは、「日本はこうあるべきだ」という経綸を聞いたことがない。
たとえば、10月からの臨時国会で法案の審議が進められる予定の、飲食料品の消費税減税について。高市さんは衆院解散を表明した際、飲食料品の消費税ゼロについて「悲願」と述べました。そりゃあ、「消費税がゼロだったらどんなにいいだろう」なんて、一般の人にとっても悲願ですよ。だけど、その悲願を達成するためには何が必要なのか。それは5兆円ともいわれる財源を確保するための具体的な方策であり、さらには財政再建なのではないですか。
国債と借入金、政府短期証券を合計したいわゆる「国の借金」は、今年6月末時点で1346兆円とされています。消費減税を目指すためには、まず国の借金を減らす。借金を減らすために別の税金を増やす必要があるかもしれませんが、その場合は目的をきちんと説明して国民の理解を求める。国民にとって耳に痛いこともはっきり言うのが首相の責任のはずなのに、高市さんは、その責任から逃げているように見えます。
※約7000文字の全文は、月刊文藝春秋のウェブメディア『文藝春秋PLUS』と『文藝春秋』2026年11月号に掲載されています(田中眞紀子「 高市さん、日本をとうしたいのてすか 」)。
・財源づくりに重きを置いた父・田中角栄
・首相は衆知を集めよ
■たなかまきこ 1944年、東京都生まれ。93年衆院選で初当選し、その後は科学技術庁長官や外務大臣、文科大臣を歴任。2012年、衆院選での落選に伴って、政界から引退した
(田中 眞紀子/文藝春秋 2026年11月号)