原発賠償訴訟で言い渡しわずか5分の「コピペ判決」。元裁判官が突く、被災者を突き放す司法の“思考停止”

―[その判決に異議あり!]―’11年に起きた福島第一原発事故で関西へ避難した被災者らが国と東電に損害賠償を求めた訴訟で、大阪地裁は9月2日、国の責任を認めず、東電にのみ一部賠償を命じた。提訴から約13年。国の責任を否定した理由は’22年の最高裁判決とほぼ同じだった。“白ブリーフ判事”こと元裁判官の岡口基一氏は、「福島第一原発事故賠償関西訴訟」について独自の見解を述べる(以下、岡口氏の寄稿)。◆原発事故の被災者らを突き放す、罪深い思考停止「コピペ」判決 ’22年6月、最高裁は福島第一原発事故をめぐる4件の訴訟で、国の賠償責任を求める原告らの主張をにべもなく退けた。国に忖度したのではないか……そう疑われても仕方のない判決であった。これより前、俺のいた仙台高裁第三民事部は国の責任を認める判断を示していたが、すべてが最高裁によって覆されたのだ。 このとき出された判決理由はわずか5ページ。最大の争点である、すなわち事故を防ぐために国がなすべきことをしていたのか?という部分については一言も触れられていなかった。「想定外の巨大津波だったから、どのみち事故は避けられなかった可能性が相当にある」 たったこれだけの理由で、国に責任はないと言い切ったのだ。 しかも、この結論を導き出す過程で、証拠がないのに裁判官らが勝手に事実の認定をするという違法まであった。 さらに情けないのは、後に続いた下級審だ。 全国で繰り広げられた原発訴訟では、この最高裁が示した判決理由をなぞって国の責任を回避させる判決が、まさにオンパレードのごとく続出することとなった。 最高裁がひとたび結論を出せば、あとは右へ倣え。あたかも自分の頭で考えることを放棄したかのようだった。 今回紹介する「原発賠償関西訴訟」もその一つだ。原発事故で関西へ避難した被災者らが、国と東電を相手取って大阪地裁に起こした損害賠償訴訟。原告らが求めてきたのは、事故の真相究明と国の責任追及、そして被害に見合う完全な補償だった。第一次提訴から、実に約13年。被災者らは、ようやく判決の日を迎えた。 ところが松本展幸裁判長は、大型事件ではよく配られる判決要旨も骨子も出さず、理由を説明することもなく、主文だけを読み上げて、そそくさと法廷を去った。傍聴席を埋めた被災者らを前に、言い渡しはわずか5分で終わったのである。◆判決書が「コピペ」でいいのか 原告らが判決理由を知ったのは、後日、判決書が届いてからだった。そして、それを読んだ被災者らは皆、失笑を禁じ得なかった。国の責任を否定する理由が、最高裁とロジックが同じどころか、一字一句違わぬ完全な「コピペ」だったからだ。こんな判決でいいのなら小学生でも書ける。積み上げられた主張や証拠と向き合った跡は、そこにはなかった。