海上保安庁が、ロシアで9月末から10月上旬に開かれた「北太平洋海上保安フォーラム(NPCGF)」への参加を取りやめていたことが政府関係者への取材でわかった。日露関係の悪化などが理由で、日本が欠席するのは、2000年の第1回会合以来初めて。
海保はNPCGFで北太平洋の安全確保や環境の保全面で各国との連携を主導してきた経緯があり、海保内でも連携への影響を懸念する声が出ている。
政府関係者によると、海保は出席を前提に4月の実務者会合にも参加していた。ところが、米国とカナダが参加を見送る方向となったことに加え、プーチン露大統領が8月に北方領土の択捉島を初訪問したことなども踏まえ、政府内で欠席が決まった。
ロシア側の発表によると、会合は9月28日~10月2日、露極東サハリン州のユジノサハリンスクで開かれ、ロシアと中国、韓国の3か国が出席したという。
NPCGFでは、各国が自国の排他的経済水域(EEZ)で取り締まった違法漁業船や違法薬物取引などの海上犯罪情報を共有。水素など次世代燃料を使った船舶事故への対応など有事の連携策も協議している。
日本が沖縄県・尖閣諸島を国有化した12年、中国が開催を一方的に中止したことがあるが、海保は同年を除く24回の会合すべてに参加してきた。
今回の欠席について、海保関係者は「これまで国際政治情勢とは切り離して実務的な協力関係を築き上げてきた。苦渋の判断だ」と話している。
明治学院大の鶴田順教授(国際法)の話「海上保安機関による多国間会合は実務的な協力にとどまらず、他国のカウンターパートとの信頼を醸成する場でもあった。ロシアとの関係悪化など厳しい国際情勢下だからこそ、政府は多様な意思疎通の手段を活用し、日本が掲げる『法の支配』の実現を主導していく必要がある」
◆北太平洋海上保安フォーラム=米国、中国、ロシア、韓国、カナダ、日本6か国の海上保安機関のトップ級会合。海上保安庁の呼びかけで東京で開催して以降、毎年各国の持ち回りで開いている。協議での合意を基に、公海上での合同漁業監視活動や油流出事故を想定した共同訓練などが行われている。