9月末に行われたiPS細胞を使った重い心臓病患者への世界で初となる手術について、21日午前、執刀した医師と患者が会見に臨み、世界初の実用化手術について、術後の経過が順調であることを報告し、さらなる活用の拡大に対する期待の言葉を述べました。
手術は、9月29日、大阪けいさつ病院で重い心臓病を患う神奈川県内の50代の女性会社員に対して行われました。女性は、約4年前に心筋梗塞を発症し、その後重い心不全と診断されました。服薬などによる治療を続けてきましたが大きな回復はみられず、大阪大学の澤芳樹名誉教授らが開発したiPS細胞から作った心筋細胞シート「リハート」を心臓に移植する手術に臨むことを決断しました。
「リハート」は、澤教授が参加する大阪大学発のベンチャー企業「クオリプス」が開発を進めてきました。心臓に貼り付けることで、弱った心機能を回復させることが期待されていて、これまでは移植や人工心臓を待つしかないとされてきた重い心臓病への新たな治療法として注目され、去年、開催された大阪・関西万博でも“未来の医療”として展示され、大きな注目を集めました。今年2月、厚生労働省の専門家部会が、今後7年間の有効性の検証などを条件に製造・販売を了承し、その後、厚生労働省が正式に承認しました。
女性の心臓に3枚の心筋細胞シートを貼りつける手術は約50分で終了。iPS細胞を使った再生医療製品が保険適用されて、一般の患者への治療で使われたのは世界で初めてのことでした。
手術から約3週間が経過した21日、執刀した澤教授と患者が会見に臨み、術後の経過は良好ですでに院内を歩ける状態にまで回復し、22日に退院する予定であることを明らかにしました。
会見で、澤教授は「1人でも多くの患者さんが元気に活躍されることを期待しています」と話し、「いよいよ実用化の段階に入った大きな一歩。普及させながら世界に向けても発信していきたい」とし、患者さんに対しては、「希望の星である」と話しました。
また、患者は、「世界初の手術に携わらせてもらえてとても光栄。記憶がないぐらいあっという間。術後もとても良好で退院をむかえられそう。感謝しかない」と話しました。術後1週間ほどで、呼吸が深くできるようになったとのことで、「今後まず犬の散歩に行きたい。思いきり走りたい。病気になる前の生活に戻したい。海に行ったり趣味を楽しみたい」と喜びの声とともに、さらなる再生医療への活用への期待を語りました。
iPS再生医療を巡っては、大手製薬会社「住友ファーマ」のグループが開発したパーキンソン病を治療するための製品「アムシェプリ」も厚生労働省から条件付きで製造・販売を承認されていて、今月中に1例目の手術が行われる予定です。パーキンソン病は手足の震えなどの症状が出て、最悪の場合寝たきりになることもある難病で、患者は国内に25万人ほどいるとされています。
京都大学の山中伸弥教授が「iPS細胞」の作製を発表してから20年となる節目の年に、世界初となる実際の手術への実用化が実現したことで、今後、医療の様々な分野での「iPS細胞」の活用が期待されています。