「この世に地獄があるなら、あの夜は地獄だった」スーパーのトイレで殺害された3歳の娘と犯人が母親の真横を…「見つけることも、捕まえることもできませんでした」【娘を奪われた母の言葉①】

2011年3月3日、熊本市のスーパーにあるトイレで3歳の女の子が行方不明になった。

女の子名前は清水心(ここ)ちゃん。
スーパーのトイレで大学生の男(当時20)に首を絞められて殺害され、近くの水路に遺棄された。

大学生だった男は無期懲役の判決が確定している。
今月16日、佐賀県吉野ヶ里町の三田川中学校で「命の大切さを学ぶ教室」が開催された。
生徒たちの前に立ったのは心ちゃんの母親・清水真夕さん。

清水さんは、生徒と目線を合わせるため、椅子に座って話し始めた。
語られたのは、事件当日の行動、亡くなった娘との対面、残された3人の息子たちの歩み、そして中学生たちへのメッセージだった。
「生きているなら大学1年生」心ちゃんが亡くなって15年
清水さんは、目の前の生徒たちと娘の心ちゃんを重ね合わせた。
清水真夕さん「15年前、娘は3歳半でした。もし生きているならば、大学1年生になっている年です。15年前なので、3年生が生まれた年になります」
清水さんは、会場の生徒たちを見て感じたことを続けた。
清水真夕さん「娘が亡くなったときには、まだ生まれていなかったり、そんな子たちがこんなに立派に成長してるんだなあと思って皆さんを見ていました。皆さんのその成長が、私に娘が亡くなってから時間が経ったんだな。今教えてもらいました」
話を聞く3年生たちが生まれてからの年月は、心ちゃんが亡くなってからの年月とほぼ重なる。
清水真夕さん「皆さんが生まれてから今日まで、たくさんの思い出を作りながら、健やかに成長してこられたと思います。私の娘は、もちろんですが、15年前に亡くなりましたので、皆さんが生きてきた人生、娘は写真の1枚も増えることはありませんでした」
ひな祭りの夜に買い物 心ちゃんと三男は書店へ
清水さんは「事件の話を少ししたいと思います」と切り出した。
清水真夕さん「あの日はひな祭りの日でした。我が家は男の子が3人いて、そしてやっと生まれた待望の女の子が心でした。ひな祭りの夜にスーパーに買い物に行っただけでした。買い物に行っただけなのに、娘はもう二度と自宅に帰ってくることはありませんでした」
家族にとって、特別ではない普段通りの夜だったという。
スーパーに着くと、心ちゃんは店内の書店で絵本を見たいと言った。

三男が一緒についていった。
清水真夕さん「スーパーに着いて、娘はスーパーの中にある本屋さんで絵本が見たいと。そのとき一緒について行っていたお兄ちゃん、3番目のお兄ちゃん。2人で絵本を見ておくということで、その間に買い物を済ませようと、2人を本屋さんに置いて買い物をしました」
「心ちゃんがいない」 当時はすぐ見つかると思っていた
買う物を選び終えると、夫がレジに並び、清水さんは書店へ向かった。
清水真夕さん「買い物を終えて、父親がレジに並んで、私はその本屋さんに行きました。本屋さんにいたのは三男だけでした。聞いてみると、『心ちゃん、トイレに行ったよ。トイレに行きたいからパパのとこに行ったよ』というので、私は三男を連れてトイレに行きました」
トイレには夫がいた。
清水真夕さん「トイレに行くと父親がいたのですが、明らかに顔色がおかしくて、私はすぐに何かあったんだなあと思いました。『心ちゃんがいない』と。でもその時は、まだすぐ見つかると思っていたんです」
店内を探し、店員にも協力を頼んだ。

それでも見つからず、すぐに警察へ通報した。
清水真夕さん「スーパーの中を探して、お店の人にも手伝ってもらって、それでも見つからなかったので、すぐに警察に電話をしました。そして、たくさんの警察官の方がスーパーに来て、娘を探してくださいましたが、見つかりませんでした」
警察官「行方不明ではなくて、誘拐事件かもしれない」
警察官から、事件の可能性を告げられた。
清水真夕さん「そのときに、これは行方不明ではなくて、誘拐事件かもしれないと言われて、私たち家族は自宅に待機をしてくださいと。自分たちで探したかったんですけど、自宅に待機ということで、家に帰りました」
家族は自宅に戻った。
ただ、清水さんだけは、その途中で呼ばれた。
防犯カメラに不審な男「トイレですれ違った男でした」
スーパーの目の前には交番があった。
清水さんはそこで、防犯カメラの映像の確認を求められた。
清水真夕さん「その途中で、私だけスーパーの目の前に交番があったのですが、そこに呼ばれました。そこで、『防犯カメラに怪しい男が映っている。確認してくれ』ということで見ました。私はその男に見覚えがありました。娘が向かっていたトイレ、娘を探そうと思って行ったトイレですれ違った男でした」
男はリュックを背負っていた。

清水さんはその様子も覚えていた。
清水真夕さん「男がリュックをからっていたのも確認してます。私はなぜかその人の顔をすごく見ていて、リュックも確認しました。でも、このリュックに人間は入らないなあと私は思って、その男をやり過ごして、娘がいるかもしれないと思うトイレや道具室とか探しました」
亡くなった心ちゃんが横を…「見つけることも、捕まえることもできませんでした」
清水さんは、後になって、その男が犯人だったと知らされた。
清水真夕さん「私は後から、その男が娘を殺して連れ去った犯人だと聞きました。私は犯人が、そしてもうすでに亡くなっていた娘が私の真横を通ったのに、それを見つけることも、捕まえることもできませんでした。なので、私は『何て母親だ』と」
その自責は、時間が経っても薄れていない。
清水真夕さん「そのときから娘を助けてあげられなかったという思いを15年間、1日も忘れずに思っていて、自分のことを恨んでいます」
清水さんは、交番でモンタージュ写真の作成にも協力した。
清水真夕さん「すごく犯人の顔を覚えていたので、出来上がったモンタージュと実際に捕まった犯人、とてもよく似ていました」
「この世に地獄があるなら、あの夜は地獄だった」自宅での一夜
家族は自宅で待機し、一晩を過ごした。
清水真夕さん「大切な子どもがいなくなった。それだけで不安とかではない。もう恐怖そのものでした。この世に地獄があるなら、あの夜は地獄だったと、今思い出してもそう思います」
夜が明けた。
娘の行方は、まだ家族に知らされていなかった。
※清水真夕さんの講演は全4話で掲載しています。