世界的建築家・故丹下健三氏が設計した高松市の旧香川県立体育館(通称・船の体育館)を巡り、香川県が進める解体工事の中止を近隣住民が求めた仮処分申請について、高松地裁(野上誠一裁判長)は30日、差し止めを認めない決定を出した。住民側は、景観や眺望の利益の保護を理由に解体の中止を求めていたが、地裁は住民が法的保護に値する景観や眺望の利益を享受しているとはいえないとして、申し立てを退けた。
一方、決定の中で「解体工事の当否等について判断したものではない」と付言。同じ裁判長のもとで審理されている、県の解体費支出差し止めを求める住民訴訟で旧体育館の耐震性能を鑑定する準備が進められていることに触れ、「解体スケジュールも踏まえつつ、可能な限り迅速に手続きを進めていくことが重要であると考えている」と結んだ。
旧体育館は1964年完成。同年完成の丹下建築で世界遺産登録を目指す動きのある国立代々木競技場(東京都渋谷区、重文)などと並び、日本最初期のつり屋根構造の建築物で、和船のような外観から地元では「船の体育館」と親しまれてきた。
建物を巡っては、仮処分申請とは別に、香川県の解体費支出差し止めを求めた住民訴訟が高松地裁で係争中だ。耐震性能を調べる現地調査のため9月15日から1カ月間、解体工事を中断したが、県は鑑定結果を待たず、10月15日に工事を再開している。【森田真潮】