《110番より先にインスタ投稿》生後3か月の娘に67か所の傷…車椅子インフルエンサー(29)に拘禁刑10年求刑、検察が「極めて残虐」と断じた“事件当日”

「確実に死なせるだけでなく、過度に苦しめた」──11月5日、東京地裁で開かれた裁判員裁判の論告求刑公判。検察側は内藤沙月被告(29)の犯行を厳しく糾弾した。
内藤被告は昨年11月、東京都世田谷区の自宅浴室で生後3か月の長女・優愛ちゃんを包丁で切りつけて殺害したとして、殺人罪に問われている。検察側が拘禁刑10年を求刑する一方、弁護側は保護観察付きの執行猶予を求め、裁判は結審した。判決は13日に言い渡される予定だ。【前後編の前編】
女性刑務官に付き添われ、車椅子で入廷した内藤被告。黒の上着に白いシャツ、黒縁メガネ。髪は濃い青色のゴムで後ろに束ねていた。インフルエンサーとして活動していた頃の華やかさとは対照的な、地味で控えめな装いだった。
わずか28席の一般傍聴席には、傍聴券を求めて定員の倍以上の人が列をなした。世間の注目を集めたのは、優愛ちゃんの小さな体に残された67か所という傷の多さ。そして、障害と向き合いながら”車椅子インフルエンサー”として発信を続けてきた被告の生い立ちが、事件にどう影響を及ぼしたかという点だ。
「極めて残虐」とされた67か所の傷
検察側がまず問題視したのは、傷の数と、その部位だった。優愛ちゃんの傷は、頸動脈を含む首に20か所、胸や腹に31か所、両足に9か所、背中に7か所の計67か所にのぼる。検察側は、頸部正面の傷は3.7センチの深さに達しており、命を奪うだけでなく必要以上の苦痛を与えたとして、極めて残虐な犯行だと強調した。
さらに検察側が悪質さの根拠とした点は他にもある。内藤被告は、優愛ちゃんを切りつけたあとも、救命のための119番通報を行わず、育児記録アプリに虚偽の記録を残して偽装工作を図っていたことを指摘された。
加えて、内藤被告のスマートフォンからは〈人殺し 赤ちゃん 懲役〉と検索した履歴が見つかっており、殺意は非常に強固だと指摘した。
これに対し弁護側は「包丁は娘ではなく、自分に向けるために持ち込んだものだ」と反論している。
110番より先に「もうげんかい」
内藤被告が自ら110番通報したのは、4日午前6時40分ごろ。だが、その前に行っていたことがある。インスタグラムへの投稿だ。
事件直後、被告は通報する2時間あまり前、午前4時ごろにストーリーズを連投している。最後の投稿には、〈もうげんかいごめんね 弱くて、よわいままで〉と自身の心情が綴られていた。
検察側は、犯行後、110番より先にフォロワーに向けて夫の悪口を書き込んでいた点を重く見ている。「自首より、フォロワーへの書き込みを優先させており、その日の午後にはヘルパーが来る予定であったことから、やむをえず110番して自首せざるを得ない状況だったにすぎない」といった厳しい見方を示した。
被害者遺族の処罰感情も峻烈だ。全国紙司法担当記者が明かす。
「元夫はこれまでの公判で『娘と同じ苦痛を味わってほしい』と訴えていました。検察側はこうした強い処罰感情や過去の判例も踏まえ、拘禁刑10年を求めたとみられます」
そして迎えた最終意見陳述。証言台の前に進んだ内藤被告は、裁判長の言葉を遮るようにして、突如元夫の名を呼んだのだ──。
(後編につづく)