九州北部大雨 「出荷は無理」「土づくりやり直し」 農家に打撃

27日からの大雨によって福岡県内の家屋被害は29日午後3時現在、八女市で一部損壊1件、同市や筑後市などで床上浸水69件、大川市などで床下浸水177件となった。29日も強い雨は降り続け、八女市の県道の崩落が拡大するなど、住民の不安も募っている。
イチゴ農家「手がつかない」
28日の大雨で山ノ井川があふれ、農地や宅地が浸水した大木町福土では29日、イチゴ農家の男性(39)が作業に追われていた。9月15日に苗を植えるために土づくりをしていたビニールハウスは深さ70センチほど浸水。土づくりをやり直さなければいけないが、まだ手がつかない。男性は「山ノ井川の堤防を高くする話は聞いているが、早く何とかしてもらいたい」と嘆いていた。
県は2019~23年度、同所から久留米市城島町までの約6キロで堤防のかさ上げなどをする予定。【中山裕司】
菊農家、2年間で3度被害
久留米市長門石町の農業、吉田徹さん(56)はこの2年間で、菊のハウスが3回目の被害に遭った。今回はハウス9棟が膝下まで浸水し、そのうち1棟では数日前に植えたばかりの菊の苗約1万4000本がつかり、吉田さんは「ほぼ出荷は無理」と話した。消毒して準備していた別のハウスも冠水し、植える予定の苗3万本も廃棄せざるを得ず、被害額は約900万円に上る可能性があるという。
吉田さんの農地では、昨年7月の西日本豪雨でも約3万本と苗が全滅し、今年7月21日の大雨でも出荷直前の3万本が水につかり、半分が半値以下だった。吉田さんは「2年連続して出荷できなければ市場の信頼に影響しないか不安。行政には早急な復旧復興支援や排水対策をしてほしい」と訴えた。
「JAくるめ」によると、サラダ菜や小松菜も7月の大雨で被害を受けて廃棄処分し、新たに苗を植えて出荷目前に再び被害に遭った農家がいるという。
久留米市は、9月定例議会に提案する一般会計補正予算案に、7月の大雨での農業被害に対し、機械や施設の復旧への補助金などを盛り込んだ。大久保勉市長は29日の定例会見で「災害が続いて離農しないようにしっかり支援したい。被害の実態が分かり次第、速やかに対処したい」と述べた。【高芝菜穂子】