台風19号による大雨で、茨城県内を流れる那珂(なか)川での氾濫発生を国土交通省常陸(ひたち)河川国道事務所や水戸地方気象台が把握していたにも関わらず、警戒レベル5相当の氾濫発生情報が出ていないことが17日、関係者への取材で分かった。堤防が決壊した国管理の7河川のうち氾濫発生情報が出ていないのは那珂川だけ。職員が現地確認できないという理由で情報が出せなかったとみられる。所管する関東地方整備局は検証に乗り出した。
那珂川は茨城県那珂市と常陸大宮市の計3カ所で堤防が決壊し、同市で465世帯が床上浸水。水戸市など数カ所でも氾濫し、同市では最大約7メートル超の浸水が生じた可能性がある。
大河川の水防情報は「指定河川洪水予報」として国や都道府県など河川管理者と気象庁が共同で発表。水位の上昇に応じて氾濫注意情報、氾濫警戒情報、氾濫危険情報の順に警戒度が上がっていき、最終的に氾濫発生が確認されると氾濫発生情報を出す。
台風が接近した12日午後9時15分、那珂川に警戒レベル4相当の氾濫警戒情報が発表された。水戸市では13日午前4時半ごろに市職員が川からの越水を確認。市は広報車や防災行政無線を通じて住民に「那珂川で氾濫発生」と避難を呼びかけたという。
防災関係者によると、市の広報を受けて水戸地方気象台の職員が常陸河川国道事務所へ連絡したが、同事務所からは「職員の巡回で確認できていない」と回答があったという。その後、13日午後2時ごろまでに同事務所で決壊が確認されたが、既に水位が下がっていたことから氾濫発生情報は出せなかったとみられる。
常陸河川国道事務所は、住民の避難行動に影響した可能性もある情報を、なぜ出せなかったのか。
「結果的に情報が出せなかったのは忸怩(じくじ)たる思い。連携がうまくいっていない」。情報を共同発表する水戸地方気象台の担当者はこう声を落とす。同時に「レベル5情報は絶対に失敗できない。確実に確認しなければ」と理解も示す。
自治体との連携にも疑問が残る。那珂市は13日午前7時ごろに越水を確認、河川事務所に連絡し「情報は既に入っていて間違いない」と回答されたが、動きはなかった。その後、越水地点で決壊が確認された。
一方、同日午前4時半ごろに越水を把握した水戸市のほか、堤防が決壊した常陸大宮市でも12日午後11時ごろ以降、住宅地での浸水を断続的に確認したが、いずれも河川事務所に連絡していなかった。同整備局の担当者は「自治体から情報が上がるのが基本的な流れなのだが」と苦言を呈す。
常陸河川国道事務所の管内では13日午前5時20分に久慈川で氾濫発生情報を出していた。多数の情報が錯綜(さくそう)したり、人手不足に陥ったりした可能性もある。
国交省河川環境課によると、発生確認は職員の目視に限らず、水位監視カメラの活用や、場合によっては自治体職員の情報で判断してもいいという。
東大大学院の片田敏孝特任教授(災害社会工学)は「広範囲に多量に雨が降り、災害が同時多発するケースは今後も増える。一つ一つ確認する旧来手法では情報発信が遅れる。自治体職員との連携など柔軟に対応しないとマンパワーには限界がある」と話した。
関東地方整備局は取材に対し「氾濫発生情報を出せていないのは事実。対応が適切だったか経緯を調べている」と回答。水戸地方気象台は「氾濫は13日昼に報道で知った」と回答した。