【後編】なぜ食べログは公正取引委員会の調査を受けたのか?

【前編】では、口コミサイトでありながら、広告を取るという、食べログのビジネスモデルが矛盾している点について書いた。

口コミサイトと広告は極めて相性が悪く、すでにビジネスモデルとして破綻しつつある。その証拠に、19年9月には公正取引委員会が食べログやぐるなび、ホットペッパーなど、飲食店の情報サイトの調査に乗り出していると報じられた。

評価の不利な扱いや不要な有料プランの契約など、パワーバランスを利用した押し売りや営業妨害がなされていないかの調査だ。これは先日話題になった芸能事務所が特定のタレントの活動を邪魔する、いわゆる「干す」という行為とも酷似している。

筆者は16年の炎上トラブルの時点でも、口コミサイトで広告を販売することはビジネスモデル的におかしいので止めるべきだと指摘した。そしてこのような深刻な疑惑がある以上、第三者委員会で徹底的に調べるべきとも指摘した(シェアーズカフェのブログ「なぜ食べログは炎上したのか? 」参照)。

それなりに読まれたこともあり、おそらく“中の人”の一人や二人くらいには目に止まったとは思うが、カカクコムにとって食べログは事業の柱でもあり、当然広告を停止することはなく、第三者委員会による調査も行われなかった。おそらく当時記事を読んだ人も大げさ、部外者が好き勝手なことを書いている、と思ったことだろう。

しかし、このビジネスモデルの矛盾と問題を何年も放置したことが、公正取引委員会が動くまで事態の悪化につながった。

問題の根本は食べログのビジネスモデルが抱える矛盾にある
Twitter上で多数拡散される情報に加え、何か具体的な情報提供など、少なくとも調査に乗り出す程度には疑わしい行為があったのだろう。

もちろん、調査結果が何一つ出ていない段階で問題があると批判することは、「火のないところに煙は立たず」という理屈と同じで、疑われていること自体が問題であるという誹謗中傷(ひぼうちゅうしょう)になってしまう。したがって事実関係については調査結果が出るまで筆者のスタンスは「推定無罪」だ。

しかし「李下に冠を正さず」、疑わしいことはすべきではないという諺(ことわざ)もあるように、店舗から広告料を受け取るビジネスモデルがなければ、そもそもこのような疑いすらかけようがない。

現在はサイト上の空きスペースに広告枠を作り、ユーザーごとに最適化した広告を表示させるアドネットワークやターゲティング広告という技術もあり、飲食店から広告料を取らずとも売り上げを得られる。飲食店以外の広告を載せることはなんら問題ない。

結局は、どのように考えても「なぜ飲食店の口コミサイトに、飲食店から広告料を受け取るという発想が出てくるのか?」という根本的なビジネスモデルの問題に行きつく。広告料の存在がサイトの根幹を成す星と口コミの信頼性に大きな傷をつけていることに、食べログ自身があまりに無自覚だ。

代理店の管理は適正になされているのか?
星と引き換えに広告を押し売りするようなことは上場企業であればしていないはず、事実関係については推定無罪のスタンスと書いたが、SNSでは飲食店のオーナーが匿名・実名を問わず、そのような無茶苦茶な営業を受けていると多数書き込まれている。

推定無罪のスタンスからでも言えることとして、原因は2つあると思われる。

1つは星の評価について「毎月第1火曜日と第3火曜日の原則月2回更新を行っています」と説明されているように、星を変動される頻度がかなり高いことだ。2週に1回程度のペースで89万店の星が上下すれば、「つい先日広告の営業を受けて断ったらすぐに星の評価をさげられた」とオーナーが感じるタイミングもあるだろう。つまり偶然の一致だ。

もう1つが食べログには広告代理店が存在していることだ。代理店一覧のページを見ると、多数の企業が名を連ねる。

代理店のWebには、「一次代理店」という表記も複数の企業で表示されている。一次があれば二次もあるのだろう。孫より下の部分まで食べログはおかしな営業がなされないように管理ができているのか?

食べログの代理店に関する説明は矛盾だらけ
そして疑念を持たれている星と引き換えの広告販売も、以下の説明の通りならば、本来は行えない仕組みだ。

食べログ店舗会員向け集客サービスを取り扱う正規代理店一覧

【問い合わせについて】

下記については、正規代理店では受付対応をしておりませんので、食べログ本部へお申し出下さい。

・食べログ店舗会員への新規会員登録について

※食べログ正規代理店一覧より抜粋

この説明が何を意味しているのか、順を追って説明したい。

食べログ公式サイトの代理店を紹介・募集するページで、代理店の業務は上記の引用箇所にある通り「食べログの店舗会員向け」の「集客サービスを取り扱う」とある。そして新規会員登録の受付は代理店では行っていないので、「食べログ本部」に申し込むように、とある。

この説明を素直に読めば、代理店は食べログに新規登録をする業務に関わっていない。つまり、食べログに未登録のお店=広告料の支払いがないお店と、代理店の接点はないことになる。

代理店では受付をしていないのに、代理店経由の新規会員登録は7割?
一方で、代理店各社のWebを見ると、堂々と「新規掲載専用受付窓口」や「掲載希望の方は連絡を」という案内があって、代理店でも堂々と新規会員登録を行っている。

もちろん、一般的なビジネスにおける「代理店」の仕事として、申し込みの仲介や代行をやっていてもおかしくはない。しかしそうであれば会員登録についてわざわざ「正規代理店では受付対応をしておりません」と食べログのWebで表記する必然性がない。代理店は新規会員登録を行っているのかいないのか(あるいは行っていいのかどうか)、Webの説明を読んでもまったく理解できない。

そして今年8月1日に行われたカカクコムの決算説明会では、食べログの広告営業について代理店の新規契約の割合が非常に大きいと説明している。

Q 直販営業を強化しているとのことであったが、そのインパクトが見えていない。進捗はどうか。
A 直販を強化しているが、数字上は見えづらいかと思う。現時点での有料プランの契約店舗数は代理店経由による割合が大きく、直販の貢献は全体の 3 割ぐらいであるが、おそらく今後1 年、2年、3年をかけて強化した結果を、現時点の数字と比べていただけると、だいぶ変わってくると思う。

※カカクコム 2020年3月期第1四半期決算説明会 主な質疑応答の要約

繰り返しになるが、新規会員登録は代理店では受けないとWebで明記する一方で、有料プランの直販は3割、残り7割は代理店経由だと決算説明会で説明されている。

筆者は業務で執筆指導をしているため、日本語能力は人並みにあるつもりだが、この説明の矛盾は理解できない。読めば読むほど自身がバカになったのかと心配になってしまう。

飲食店経営者ではない筆者は食べログの営業を受けたことはないが、この説明の矛盾や分かりにくさを見るだけでも、食べログが代理店をコントロールできているのか、広告営業が適正に行われているのか、極めて疑問に感じる。

つまり非会員の店舗(広告料を払っていないお店)に、食べログのあずかり知らないところで代理店がおかしな営業をかけている実態はないのか? そしてこれだけ多数の苦情が来ている時点で、代理店の状況やオーナーの苦情を、食べログは精査しなくていいのか? ということになる。

なぜ食べログはトラブルを放置するのか
今回の騒動を受けて食べログは、広告料と引き換えに星を操作することはないと、改めてネット上に多数あるオーナーの批判的な書き込みを真っ向から否定した。運営元のカカクコムも同様のプレスリリースを出している

食べログの言い分が正しいのであれば、根本的な信用にかかわる部分で深刻な「行き違い」が店舗との間に発生しているか、そうでなければ食べログを貶(おとし)めたい自称オーナーが「悪質なウソ」をTwitter上でまき散らしていることになる(あるいは食べログや代理店を名乗るウソツキがオーナーをだましているというケースも考え得る)。

仮にSNS上の書き込みが全てウソならば、食べログはTwitterに発信者開示請求を行いウソを書き込んだ人物の身元を特定し、営業妨害で訴えるべきだ。株主から会社を預かって経営している経営陣には、企業価値を毀損するデマには速やかに対応する義務がある。しかし、食べログがこれら多数の書き込みについて、訴訟や削除の警告を行ったという話は過去に聞いたことがない。

何年も前からくすぶり続けて幾度となく炎上している状況でありながら、それらの声を放置することが上場企業のガバナンスとして問題はないのか。両者の極端に解離した言い分がこれだけ長期に渡って併存している状況はあまりに異常だ。

そしてこの問題の解決に動くべきは、当然のことながら飲食店オーナーではなく食べログだ。飲食店の情報を勝手に使うことで食わせてもらっているのだから当然だ。

公正取引委員会が調査に乗り出した以上、これまでのような真相は藪(やぶ)の中、どっちの言い分が正しいのかよく分からない……という状況が続くことはないだろう。日本最大の飲食店口コミサイトの行方がどうなるのか、今後も注目される。

(中嶋よしふみ シェアーズカフェ・オンライン)