10月1日、1つのツイートが話題になった。レシピ情報を発信する料理研究家が、とある居酒屋に掲示された「当店は食べログへの掲載を断りします。」と題した張り紙を撮影したものだ。張り紙の内容は以下の通りだ。
食べログユーザー会員は出入り禁止です。食べログヘビーユーザーは傍若無人、独善的、自ら神のごとき口コミに迷惑しまして禁止します。大切なお客様に評価していただきますので、食べログヤクザの評価は結構です。食べログみかじめ料のお支払いお断り!
※リュウジ@料理のおにいさんバズレシピ のツイートより
張り紙にはこの後にいくつか客への注意喚起も書いてあるが、注目された部分は食べログに関する記述で強烈な敵意むき出しの内容だ。
そしてこのツイートをきっかけに、食べログに関する話題が多数噴出した。「星の評価が急に下がり、食べログから広告料を払えば元に戻すと電話がかかってきた」といった飲食店オーナーを名乗る匿名アカウントのツイートも、数万件のリツイートや「いいね」を集めるに至る(現在は削除)。
2005年にサービス開始以降、レストラン情報サイトとしては後発といってもいい食べログは、月間利用者数1億1877万人、月間PV20億4870PV、掲載店舗数89万件以上、口コミ数3200万件(食べログ 媒体資料 株式会社カカクコム 2019/10/12より)と圧倒的な規模と影響力を誇るが、常に話題となる問題と疑惑がある。
1つが飲食店に対する迷惑な口コミの存在と星(評価)の操作、もう1つは利用者が書きこむ口コミ(レビュー)の削除だ。
食べログは過去には同様の炎上トラブルがあった。「昔の記事が流れていると思ったらまたか」というツイートも筆者は目にした。つまり以前とまったく同じ炎上が今また起きている。星の操作に関する事実関係は別にして、食べログはこのような疑念を払しょくすることがまったくできていない。
食べログは飲食店の情報と利用者の口コミで成り立つサイトでありながら、飲食店からも利用者からも批判される極めて異常な状況だ。そして食べログが炎上し続ける根本的な理由は、以前から変わっていない。その理由とは、口コミサイトと宣伝サイトという、本質がまったく異なる姿をユーザーと飲食店を相手に都合よく使い分ける矛盾したビジネスモデルだ。
食べログは広告料に左右されているのか?
現在飲食店を検索すると、検索順位の一番目や二番目といった上位に食べログのページが表示される。星の数が多いほど、良い口コミが多いほど来客にはプラスの効果が働く。
この仕組みはオーナーにとって便利なサービスだが、悪い口コミを書かれた場合には一転してマイナスの効果を発揮する。それが公平な競争による評価であれば、一定程度は仕方がない面もある。あらゆる商品やサービスは絶えず客の評価にさらされるからだ。
しかし食べログにはオーナーから、「ウソを書かれて客数が減った」「食べログの有料広告の売り込みを拒否したら星の数を減らされた」と、事実であれば詐欺や営業妨害となりかねない疑惑まである。しかもこれは何年も前から続く食べログへの疑惑で、一部のオーナーから食べログは蛇蝎(だかつ)のごとく嫌われている。
一方でユーザーからは、レビューで問題点を指摘したら事実を書いたのに削除された、食べログはお店から金をもらっているから不利なレビューを削除している、といった口コミサイトとしては致命的な疑惑も出ている。
星の数の操作やレビューの恣意的な削除は口コミサイトとして考えられない問題行為だ。運営会社のカカクコムは上場企業であるため、コンプライアンスやガバナンスの観点からこれらの問題行為、場合によっては違法行為が行われているとは考えにくい。しかし現実にそのような批判が何年も前から多数発生している。
その原因はさまざまにあるとは思うが、一番の理由は広告料の存在だ。
食べログは広告料を払うと上位表示される
16年にも、食べログは星の操作をした疑いをオーナーから投げ掛けられ、それがSNSで拡散したことにより大炎上した。その際も食べログの有料プラン(広告)を断ったら星の評価が下がったという、今回とまったく同じようなツイートをオーナーが書き込んだことが発端だ。筆者は当時もこのトラブルについて言及した(シェアーズカフェのブログ「なぜ食べログは炎上したのか? 」参照)。
食べログは09年から広告を販売しており、ユーザーがお店を探す際に上位表示するプランを販売している。ランチタイムやディナータイムなどはさらに上位に表示するプランもある。これはネット上でプランの内容から料金まで誰でも確認できる。
公表されている中で最も高額なプランは、10万円+消費税に従量課金となっている。従量課金額は食べログを経由した予約数によって決まり、来店人数にディナーならば200円、ランチならば100円をかけた金額となる。
食べログは口コミサイト? 宣伝サイト?
さて、これを読んでどう感じただろうか。広告にお金がかかること自体はなんらおかしくない。しかし食べログは、ユーザーの口コミが作り上げる口コミサイトであると認識されている。広告の販売開始からすでに10年経ったが、今でも表示順位に広告料が影響していることを知らない人は多数いるだろう。筆者の周りでも、広告料の存在を知らない人は何人もいた。
そして食べログは、原則として店舗が情報の削除を希望しても応じていない。レビューではなく店舗情報全体、ページ自体の話だ。16年には最高裁まで裁判で争って、店舗情報の削除を拒否したこともある(カカクコム側の勝訴)。隠れ家的に営業したい、常連客だけを相手にしたい、といった意向も無視して掲載される場合も珍しくない。
つまり食べログのビジネスモデルは一方的に店舗情報を利用してビジネスを行い、削除の拒否にも応じず、その上で飲食店側に判断の自由があるとはいえ、広告料まで取るケースもあるということだ。
食べログはお店の味方? 利用者の味方?
本来、口コミサイトはユーザー側、あるいは中立的な立場での運営が求められる。例えば、お店に不利な情報が全て削除される口コミサイトがあったら、利用者はどう感じるか? おそらくまともなサイトとは誰も思わないだろう。
しかし事実を書いたのに削除されたと、ユーザーから批判をされる理由の一つに、食べログが店舗から広告料を受け取っているからという側面がある。ユーザー側ではなく、中立ですらなく、お店にとって都合の良いサイトとして一部ユーザーからは認識されている。
ではお店から見て、食べログは都合の悪いレビューを全て削除してくれるサイトかというと、決してそうではない。冒頭で紹介した通りオーナーからは「神のごとき口コミに迷惑」しているとまで敵視されている。しかもお金を払わなければ評価を下げると脅された、という疑惑まで出ている始末だ。
詳細は後述する通りさまざまな事情はあるものの、口コミサイトを名乗りながら不利なレビューを削除してお店側に立っているように見えたり、一方でレビューの星を人質のように使って広告料の支払いを迫る悪質なビジネスを行ったりしているようにも見えるなど、立ち位置や軸足がいったいどちらを向いているのか、まったく分からない仕組みで運営されているのが食べログだ。
冒頭の飲食店の張り紙にあるように、ヤクザが飲食店等からお金を巻き上げるお金と広告料は同じだとして、「食べログみかじめ料のお支払いお断り!」とまで批判される理由がここにある。
食べログのビジネスモデルは矛盾している
では実際に、広告料を払ったお店の不利なレビューを消したり、お店に対して広告料を払わないと星の数を下げますといった営業活動をカカクコムがやっているのかというと、おそらくやっていない可能性の方が高いと思われる。もしやっていることがバレてしまえば、サイトの存続どころか企業の存続すら危うい行為だからだ。
録音機能付きの電話を使っている飲食店や企業はいくらでもあると思うが、悪質な営業の音声が告発されるようなことはまだ行われていない。恒常的にそのような悪質な営業活動が行われているのであれば、証拠となる音声やメールが週刊誌等を通じて公開されたり、ネット上に出回ったりしてもおかしくない。
ではなぜこのような批判が何年もくすぶり続け、何度も炎上をしているのか。まずは前述の通り、口コミサイトを名乗りながら広告を売るという、本来であれば考えられないような矛盾したビジネスモデルが原因だ。
コンテンツと広告の切り分けはメディアの生命線
食べログはCGM=コンシューマー・ジェネレイテッド・メディア、つまり口コミや掲示板などユーザーが作成した情報で成り立つ「メディア」であり、メディアである以上は本来守るべき矜持(きょうじ)が求められる。
新聞や雑誌やテレビ、そしてニュースサイトなどの各種メディアは、そのほとんどが広告収入で成り立っている。そして広告を出すのは企業だ。しかし各種メディアは企業の不祥事をニュースとして伝えることもある。つまり広告主を記事で批判する場合もある。
もし「あのブラック企業を批判しないのは、広告料を受け取っているからだ」などと指摘されたら、そのメディアを誰も信用しなくなる。
数年前に吹き荒れたステマ騒動=ステルスマーケティングは、「お金で買える広告枠」ではなく、本来「お金で買えない枠」、つまり通常の記事やコンテンツの部分を売っていたことが問題となった。外部の影響を受けず、編集部が編集権を守るべき部分をお金で売り渡し、しかもそれをこっそり行う。法的にグレーで、なおかつ読者を裏切る行為でもある(現在まともなメディアはステマを徹底的に排除している)。
星の評価をお金で売るということは、記事の内容をお金で売り渡すステルスマーケティングと同じで、メディアとしての価値はゼロどころかマイナス、つまり詐欺行為と同様になる。
星の売買はステマである
では食べログは広告料で星の評価の変更、ステマ的な行為をやっているのか? これはやっていないはず、ということになる。企業としてあまりにハイリスクだからだ。
現在、食べログのトップページを開くと、利用者が多いであろう「東京」とその下に「銀座」や「渋谷」「新宿」などの地名が表示される。
これらの地名をクリックすると、左から標準・ランキング・口コミ数順・ニューオープン順と4つのタブが並び、それぞれタブごとのルールで飲食店の一覧が表示される。そして最初に表示される「標準」の横には、「【会員店舗優先…」と表示されている。そのすぐに下には「標準」の並び順についてというリンクがあり、「標準」は広告料の支払いが加味された並び順であることが明記されている。
標準の横に付け足された表記は、16年の炎上時に追記されたものだ。標準の掲載順には広告料の支払いが影響しているとメディアの取材で明かし、それは利用者に対して明示しないのか? と取材で問われて、「今すぐに変更する予定はないが、表記などについて検討していく」と回答し、そののちに変更された結果でもある。
当時は、「標準【広告優先】」と広告の文字があったが、現在では「標準【会員店舗優先…」と一目で広告であるとは分かりにくい表記へ後退している。この点も問題だといえる。
【後編】に続く。本日お昼に掲載予定。
(中嶋よしふみ シェアーズカフェ・オンライン)