台風19号で外へつながる唯一の橋が流失し、28人が孤立状態となっている福島県矢祭町の高地原地区。住民は不通となっているJR水郡線の鉄橋を使って買い物などに出掛けている。その鉄橋も鉄道が再開すれば通れなくなる可能性があり、住民は不安を募らせている。
「車があっても意味がない」。90代の母親と暮らす瀬谷正さん(72)は表情を曇らせる。山間部にある高地原地区の住民にとって、久慈川に架かる長さ約80メートルの橋は、対岸を結ぶ「生命線」だったが、台風による増水で橋脚ごと流された。瀬谷さんは対岸に止めた友人の車で用事を済ませている。
住民は鉄橋の線路脇を歩いて渡っているが、幅は狭く、大人2人が擦れ違うのがやっとだ。建設業の男性(50)は「まとめ買いしたいが、たくさんは持って帰れない」と話す。
鉄橋もいつまで利用できるか分からない。JR東日本が11月中旬に水郡線について、高地原地区での運行再開を予定しているためだ。町は歩行者用の簡易な橋を早急に建設する方針だが、車も通行できる仮設橋が完成するのは早くても半年かかるという。
流出した橋には水道管も併設されていたことから、地区では断水が続いている。石井近光さん(85)は「不便なんてもんでない。水のない生活がこれほど大変とは」と漏らす。
断水で風呂やトイレが使えず、石井さんは風呂の水をためるため近くの沢まで水をくみに行く。「年寄りに20リットルのポリタンクは持てない」と話し、何往復もするという。
町は16日に開いた説明会で、町営住宅への一時避難を提案した。だが、多くの住民が避難に拒否感を示したという。