10月22日。朝から、ダウンを羽織っていても肌寒いくらいの雨が降っていた。13時から、天皇陛下が即位を国内外に宣言される「即位礼正殿の儀」が皇居・宮殿「松の間」で行われた。儀式の直前から次第に天気は好転して、薄日がさしたようだ。
天皇陛下は玉座「高御座(たかみくら)」でおことばを述べられ、その隣の「御帳台(みちょうだい)」に立たれる雅子さまのお姿もあった。ついにこの日を迎えられたのか、という感慨を覚えた人も多かったのではないだろうか。御帳台の帳(とばり)が開いた時、雅子さまは緊張感がただよう表情を浮かべられていた。
雅子さまは、午前7時すぎに半蔵門をお一人で通過された。ホワイトのお召し物に身を包まれて、雨の中、センチュリーロイヤル(トヨタが設計した皇室専用車)の窓を全開にして沿道の人々へ手を振られていた。この時の表情は落ち着いた笑顔で、パッと光り輝くようだった。
天皇皇后両陛下は「即位の礼」の中心となる行事「即位礼正殿の儀」を終えられ、安堵されているだろうか。さらにこの夜、両陛下は海外からの賓客らを招いた「饗宴(きょうえん)の儀」(第1日、この日を含めて計4日予定されている)に臨まれる。
同日15時30分から予定されていた祝賀パレード「祝賀御列(おんれつ)の儀」は台風19号による甚大な被害を受けて、11月10日に延期された。10月15日、「台風第19号による災害についてのお見舞い」として、両陛下のお気持ちが宮内庁から発表されている。
10月6日には、朝からパレードのリハーサルが粛然と行われた。午前7時頃に車列が動き始め、静かに、そして滑らかに走行しながら時速10キロほどのスピードを保っていたようだ。
リハーサルでは両陛下が乗車されるパレード専用のオープンカーは走行しなかったが、当日は白バイやサイドカーなどに囲まれて厳重に警備される。車列全体が通りすぎるまで約5分はかかっただろうか。赤坂御所へ向けて、荘厳な車列はゆっくりと進んでいった。
この時、皇太子さま(当時)と雅子さまの結婚の祝賀パレードを自然と思い出した。胸元のフリルがゴージャスなハナエモリの純白ドレスをお召しになった雅子さまを報道で拝見して、とにかく「きれいな方」という印象が強かった。外務省に勤務していた頃、肩で風を切って歩く様子から、皇室に入られてからもキャリアを生かしたご活躍を想像していたし、「妃殿下になる方は、生まれながらの素質をお持ちなのだろうか」と考えた。
小和田邸を出発する際の様子も忘れがたい。愛犬・ショコラに顔を近づけた雅子さまの水色のツーピースの鮮やかさと、記者会見で、母の優美子さんが「娘でありながら大切な預かりものをしているという気持ちでいたので、ほっとしているところです」と語っていたことを記憶している。
あれから26年。長期療養中の雅子さまが皇后陛下になられた時、本当に御帳台へお立ちになったお姿を拝見できるのだろうか、と思いながら取材を続けていた日々もあった。今日の両陛下のご様子から、ずいぶん時間が経ったことを実感した。
断片的ではあるが、雅子さまのお声が報道されることも次第に増えてきた。例えば9月7日、全国豊かな海づくり大会に出席されるため、秋田県を訪問された天皇皇后両陛下が、秋田県動物愛護センターを視察された時のことだ。
天皇ご一家は、保護犬である柴犬の「由莉(ゆり)」を飼育されている。雅子さまは、小型犬シーズーに「みよちゃん、行きますよ」と呼びかけながら歩かれた。かつて記者会見でお話しになっていたイメージより高く、柔らかな印象のお声だった。その後、子供たちと一緒に会話をされる中で、雅子さまは「犬飼っているの。大変だったね」と声をかけられていた。陛下が由莉の写真を取り出されて、「飼っているんですよ、僕も」とお話しされる場面もあった。
雅子さまご自身のお言葉による発信はまだ少ないこともあり、現在はよりファッションに注目が集まっているとも言える。ご成婚当初は、雅子さまによく似合うビビッドカラーのスーツやドレスをお召しになっていたが、お出ましの機会が限られていた時期はダークトーンが中心だった。これからはご自分がお召しになりたいものを、お気に入りのデザインで、どんどん取り入れられるだろう。雅子さまらしい「発信」を期待している人は多いはずだ。
(佐藤 あさ子)