釣りボート、浸水救助に奔走 長野の解体業者が活用「無我夢中で怖さ感じず」

台風19号の影響で長野市内の千曲川の堤防が決壊した13日。浸水で住宅の2階などに取り残された住民を、釣り用のボート2そうが次々に助け出した。救助活動をしたのは長野市穂保の解体業「笠興(かさこう)」(笠井文宏社長)の社員たち。活動の中心となった山崎訓良さん(45)と佐藤雄矢さん(29)は「無我夢中で怖さは感じなかった」と振り返る。【原奈摘】
13日午前6時半ごろ、長野市穂保や周辺では浸水が進んでいた。笠興の社屋も歩いて行くのは不可能な状態。従業員たちは、パソコンなどが水につかるのを防ごうと、付き合いのある企業からモーター付きの釣り用ボートを借りて会社に向かうことにした。
山崎さんと佐藤さんが慣れない操縦に苦労しながら会社の近くまで行くと、トレーラーの荷台に乗った男女2人が手を振って助けを求めていた。2人はおびえた様子で、防寒具もなく寒そうに見えた。「会社よりも人助けが優先だ」。2人をボートに乗せて安全な場所まで運んだ後、笠興にあったもう1そうの釣り用ボートも使い、本格的に救助活動を始めた。
高齢の女性から「近所に人が取り残されている」と助けを求められた。女性から聞いた場所に向かうと、家の2階の部屋から60代くらいの女性と40代くらいの息子が手を振っていた。山崎さんが駐車場の屋根から1階のひさしに登り、2階の窓から出てくる2人を受け止めてボートに乗せた。
一刻も早く2人を安心させようと、山崎さんをその場に残し、佐藤さんはボートを移動させた。山崎さんは「仕事柄、屋根の上くらいなら怖くない。雄矢が必ず来ることがわかっていたから、救助が来るかどうか不安だった人たちとは気持ちが全く違った。すぐに2人を運んであげたかった」と話す。
午後まで救助や見回りを続け、2人で10人ほどを助けた。救助された人たちは「ありがとうございます」「助かりました」と言ってくれたが、消耗し、寒さやおびえもあってか、体は震え、言葉も出にくい様子だった。
佐藤さんは救助した人たちを思いやった。「一生心に残るような恐怖を経験したと思う。災害は今後も起こるかもしれない。逃げ遅れのないようにしてほしい」