【台風19号】車で移動中の死者・行方不明者3割

広範囲で浸水や土砂崩れを引き起こした台風19号では、死者・行方不明者の3割程度が、車の運転中や同乗中に被災していた。危機が目前に迫る中、少しでも早く安全な場所へ移動する手段としての車の利用には、リスクが伴うという実態が浮かび上がった。
栃木県足利市では、家族が運転する車で避難中だった女性(85)が、立ち往生していた別の車の後ろで止まっているうちに車が浸水し逃げ遅れて死亡。福島県白河市では、浸水した車の上で救助を待っていた男性(65)が濁流にのまれて亡くなった。
岩手県岩泉町の男性(71)は、浸水で陥没した道路に車が落下。神奈川県相模原市では家族4人が乗った車が洪水で崩落した道路から川に転落、全員が死亡した。
水難事故に詳しい長岡技術科学大学大学院の斎藤秀俊教授は「乗用車での避難は低い土地や河川や海のそばからいち早く離れるためには有効な手段だが、既に冠水した箇所では近くの高い建物などに徒歩で登る方が安全。躊躇(ちゅうちょ)せず車外に出ることが必要だ」と強調する。
一般社団法人日本自動車連盟(JAF)によると、乗用車が冠水した道路を問題なく走行できる深さは、車の床面に水がつかない水深10センチ程度まで。30センチを超えるとエンジンが停止し車から脱出する必要がある。50センチを超えると車が浮いてパワーウインドーも作動しなくなり、非常に危険な状態となる。
内閣府防災担当の担当者も「車での避難には一長一短があるが、何よりも重要なのは避難準備、勧告の発令に応じて速やかに行動することだ」と話した。