「仕事は楽しい」は幻想か? 「発想・アイデア」が経営資源になるこれからの企業に必要なもの

こんにちは。スコラ・コンサルトのプロセスデザイナーの塩見康史です。私は組織開発コンサルティングに携わるとともに、それとは別にクラッシック音楽の作曲家としても活動をしています。

これから、5回にわたって「楽しいと生産性」をテーマに、スコラ・コンサルトとサイボウズ チームワーク総研が共同で連載を進めていきます。

「仕事は面白くない」人がまず考えるべきこと
仕事は楽しいに越したことはないと頭では分かっていても、「現実には、仕事はつらいもの、面白くないものもの」と感じている方も多いのでないかと思います。

しかし、私たち(スコラ・コンサルト、サイボウズ)は、あえてこれからの時代に求められているのは「楽しいがあふれる会社」であると言いたいのです。その方が個人にとって良いのはもちろんですが、会社や経営にとっても、「楽しい」方が生産性が上がる理由があります。「楽しさ」を肯定することは、組織の中で「個人の幸福」を大切にすることです。個人がどれくらい幸せでいるか、「楽しさ」はそのバロメーターなのです。

ここでいう「楽しい」とは、仕事で「好きなこと」「得意なこと」「やりたいこと」に取り組み、自分の能力を思い切り発揮することで得られる「充実感」「達成感」を指しています。

好きなことをしているときは、夢中で没頭し、時間は止まっているように感じます。そういう状態は、とてもクリエイティブな状態です。また、自分にとって、あるいは社会にとって「とても意味がある」と感じることをしているときも「楽しさ」を実感します。

このように「楽しい」は、「好き」「没頭」「意味」などのキーワードと深く結びついています。これらに共通しているのは、仕事「そのこと自体」を有意義と感じていることです。

なお、私の経験からいうと、作曲をしているときは、まさに深い没頭状態にあります。さまざまな情報やアイデアが脳の中を飛び交い、反応し合い、さながら混沌の状態ですが、強いエネルギーの渦の中から新しいビジョンが創造されます。このプロセスでは、まさに「楽しい」があふれており、とてもクリエイティブな状態です。

「発想・アイデア」が収益の源泉に
これからは、ますます「発想・アイデア」が経営資源として重要になってきます。生産性を上げるには、「コストを下げる」「売上を増やす」という2つの方法がありますが、コストカットには限界もあり、新しい価値の創造を通して、売上を増やしていくことがより重要となります。この新価値創造には優れた発想が必要です。

しかし、発想やアイデアは、分析と違って、決められた手順で行えば成果を得られるという性質のものではありません。生身の人間が、探究心と好奇心に駆られて、自分の感性や脳をフル回転させて、没頭することで、あるときふっと生まれる。発想・アイデアとはそういう性質のもので、「やらされ感」から優れたアイデアが生まれることはありません。まさに「楽しさ」をエネルギーとして生まれるものなのです。

「楽しくない職場」には人材が集まらない

最近、若手社会人の人生観・仕事観が、これまでの会社中心から個人中心へとシフトしてきているといわれています。これからは、「自分の人生の充実」につながらないと感じる職場に人は集まりません。

一方、楽しく仕事に取り組む人が集まる職場は、過剰な管理が必要なくなり、自律分散的組織運営で回るようになります。人は管理されるときよりも、自分で考えて動くときの方が、高いエネルギーを発揮します。

そういう組織は、一人ひとりが仕事の意味や目的を明確に意識しているため、ムダな仕事はせずに、成果や目標につながる仕事にフォーカスし、高い生産性を実現します。また、社員が生き生きと楽しくはたらき、成果を上げているような会社は、社会から厚い信頼を得ることができ、ブランドという無形の財産を蓄積することができます。

仕事で高い成果を上げるためには、チームワークが重要です。しかし、私たちはまずはじめに「個人の自立と幸福」をしっかりと確立し、その上で自立した多様な個がチームを組む方がうまくいくと考えています。なぜならば、日本のような同質な、周囲の目を気にする社会では、先にチームワークを強調すると、個が集団の規範やしがらみの中に埋没しやすいからです。

多様な個が集まるチームでは、メンバーは「チームの目的」のもとに集い、自分の得意な分野でチームに貢献します。不得意なことを無理にやってもらうようなことはしません。それぞれの参加スタンスや貢献の仕方が違って良いのです。また、メンバー同士が、心理的安全性を感じることができるような、信頼関係のある人間関係で結ばれていることも重要です。

経営層がやるべきことは「環境作り」
さて、これまで述べてきたようなことを実現していくためには、「環境づくり」が重要です。いくら自律的に動けるメンバーがいても、組織環境がそれを許さない場合、個人は力を発揮できず、じきに辞めてしまうでしょう。また、現時点でそれほど自立していないメンバーがいたとしても、組織環境や周囲のメンバーが背中を押すことで、自立へ向けて進んでいくことができます。

環境とは具体的には、「マネジメントスタイル」「仕組み」「企業文化」などです。これらが「個の自立と幸福」を後押しするようなものであることが望ましいのです。

例えば、スコラ・コンサルトの組織環境は、完全にフラットな組織で、上司も部下もなく、全ての社員が自分の判断で動く「ティール組織」のような組織運営をしています。各メンバーが自分の責任を明らかにして、仲間と協力して、自律的に課題に取り組んでいます。このような環境が組織メンバーの自発性や創意を引き出しています。

環境づくりの中で、仕組みづくりもとても重要です。サイボウズでは、ITシステムを活用し、膨大な情報を共有し、また、対面で話しあう「場」も重視するなど、バーチャル・リアルの両面から、さまざまな仕組みを構築し、チームのコミュニケーションを深めることを促進しています(具体的な取り組みは、次回以降の連載で紹介します)。このような環境づくりにおいては、トップや経営のサポートは欠かせません。

「楽しい」を増幅する会社について概要を述べてきましたが、いかがでしたでしょうか。まだまだ現実離れしていると感じた方もいらっしゃるかもしれません。組織の在り方に正解はありませんので、みなさまの組織でも、自分たちの手で、ありたい組織づくりを進めていかれることを願っています。

次回からは、より具体的にテーマを絞り、事例なども交えて、「楽しい」が増幅する会社づくりについて紹介していきます。

著者プロフィール・塩見康史(しおみ やすし)
大企業の人事部門を経てスコラ・コンサルトに入社。組織開発、企業風土改革、戦略ワークショップなど、対話を通してチームで「新しい知」を創発するプロセスの支援を得意とする。

クラッシック音楽の作曲家でもあり(2017年朝日作曲賞受賞)、芸術創造の実践経験を生かした「創造的思考トレーニング」にも取り組んでいる。