台風19号の豪雨で千曲川の堤防が決壊し、約5000棟が浸水した長野市では、住宅から出る家財道具などの「災害ごみ」の問題が深刻化している。市は仮置き場を開設したが、9種類に分別して出す必要もあって、住民らからは「遠すぎる」「分別する余裕がない」との悲鳴が上がり、中には近場の公園や畑にごみを捨てている人もいる。ごみが防火水槽のある敷地に積まれ、火災の2次災害の危険も出てきている。【山下貴史】
堤防が決壊した現場近くの同市穂保などでは、たんすや布団、冷蔵庫などが畑などに無造作に高さ2メートル以上積まれている所が点在している。ベッドの布地に黒いペンで「満ぱい もうダメ」「道には置かないでください」と注意喚起する集積所もあった。
床上73センチ浸水した同市穂保のリンゴ農家、落合道雄さん(78)の自宅近くのごみステーションにも災害ごみがうずたかく積まれ、防火水槽が埋もれてしまった。「消火栓も壊れ、今火事になったら危ない。ごみの臭いも出始めている。早くどかしてほしい」と訴える。
同市赤沼の赤沼公園など被災地にある臨時のごみ集積所は、近隣住民らが自宅の復旧のために苦肉の策で設けたもので、市はあくまで認めていないのが実情だ。市は仮置き場を3カ所開設し、不燃物、金属くず、家電など9種類の分別をして出すよう求めている。
市指定の仮置き場では、車の渋滞が起きるなど運び込む作業に時間がかかる事態にもなっている。決壊現場から最も近い豊野東山第1、第2運動場までの距離は約7キロあるが、ここは22日に満杯となり、焼却施設などに搬出するため一時休止に。23日から開設したアクアパル千曲(同市真島町川合)は残り2カ所に比べれば近いものの、約10キロも先だ。
同市穂保のある男性は、自らの土地を開放し、ごみ置き場と泥置き場を提供した。「助け合わねえと前に進まねえから」といい、市の仮置き場が離れていることについては「おかしいよ。一番被災している所はここなんだから、近い所に仮置き場を作ってほしい」と求める。ある中年女性は「自宅の片付けが進んでいる人とまだまだ進まない人の格差が出始めている。まだごみを出せない人に分別する余裕はない」と悲鳴を上げる。
国土交通省は「緊急事態」として地元の自治会と協議し、堤防脇の一角に災害ごみの一時仮置きを許可した。県の要請を受けた自衛隊は、赤沼公園と同市大町にたまっている災害ごみから順次、市の仮置き場に搬出する作業を進めている。
市廃棄物対策課は、焼却施設や埋め立て地に運んで処理する必要性からごみの分別を求めており、「仮置き場も遠くてご迷惑をかけますが、できる限りのことをしており、ご理解いただきたい」としている。