25日に記録的な大雨に見舞われた千葉県茂原市では、市内を流れる一宮川と豊田川が氾濫し、市役所の周辺が冠水した。目の前にある避難所となった公民館も1階が浸水し、避難した住民がボートで再び市役所に避難する事態となった。同市は平成25年10月にも台風による浸水被害に見舞われたが、住民は「今回は辺りが一面水だった。こんなの見たことない」などと口々に語る。
市内中心部、とりわけ川の近くは一夜明けた26日も水は引いたものの、ところどころに泥や水が残る。道路上の乾いた泥は自動車が通るたび、ほこりが舞い上がり、マスクをしながら後片付けをする被災住民らの姿も目立った。
市役所の南側に位置する中央公民館は、すぐ隣を豊田川が流れる。25日午後1時すぎに姉らと避難してきた同市緑町の会社員、加藤しず江さん(65)は到着後、そのまま2階に案内された。しかし、間もなくして川は目の前であふれ出し、1階はみるみる水に覆われていった。
「外は川と地上の境界がない」状況で、屋外に出るのは危険だった。停電も発生し、寒さにも襲われた。夜になると、ようやく消防や警察がボートで救助に訪れ、市役所に移動。途中で見える車はサイドミラーの高さまで水没していた。37世帯78人(26日未明時点)が不安な一夜を過ごした。
「今まで市に苦情は言っていたけど、避難所が辺りで一番低いところにあるなんて…」。加藤さんは、そう漏らした。
川を挟んで約50メートル東側に住む同市茂原の無職、松本伸彦さん(57)は、25日午前中に雨水が自宅前の道路を川の方向に流れているのを見た。徐々に水かさは増え、午後2時すぎになると、川の方向から逆方向に濁った水が流れていた。
「逃げなければ」。車いす生活を送っているが、車は自ら運転できる。すでに公民館の方向は危険で、浸水の心配がないコンビニエンスストアの駐車場に逃れた。以前の台風被害でも床下浸水した際の経験を生かし、「今回は早めに逃げた。雨の降り方が今までと違う」。ただ、自宅は床上約30センチの浸水被害を受けた。「以前と比べて川の土手が蓄積した土砂で盛り上がってきている。もう少し掘削するとか対応できないのか」と語った。
最も浸水被害が大きかった地区の一つが、豊田川と一宮川の合流地点に近い八千代地区。付近にある信号機の柱の制御機器は、最大で高さ1メートル50センチの位置に設置されているが水没。7カ所が故障し、警察官が交通整理を行っていた。
同地区近くの川沿いにある住宅では、家族や応援に来た知人が総出で後片付けを行っていた。おびただしい数の泥だらけになった家具が庭や周辺道路に並ぶ。
住人の40代女性は「全部買い替えないとだめ。川沿いに行政が土嚢(どのう)を積んでくれていたけど意味がなかった。今後の対策といっても、2階に上げられる物を上げるしかできることがない」と苦笑いした。
また、近くの和風レストラン「味の民芸」茂原店では、キッチンの巨大な業務用冷蔵庫が倒れるなど、水位の高さと水流の強さを物語る光景が広がっていた。客席に固定されたソファもはがし、客が多く入る土日用に仕入れた食材も全て廃棄処分に。本部から対応するために駆けつけた運営会社常務の榊原晃さん(54)は「消毒もしなければならず、被害額はいくらになるのか、いつ再開できるのか全く見通しが立たない」と話していた。