水害がここまで広大な地域に及ぶとは、誰が予測できただろうか。台風19号は10月24日時点で71もの河川で堤防が決壊し(国土交通省調べ)、13都県で死者80人以上、浸水家屋6万棟を超える被害をもたらした。気候変動と風水害の研究の最前線に立つ東京大学未来ビジョン研究センターの沖大幹教授に大水害時代にどう向き合うべきかを聞いた。 ■20世紀の「100年に1度」が21世紀には「30年に1度」にも ――台風19号による雨量は、「100年に1度」のレベルを超えた、と報じられました。防災科学技術研究所が発表した分析結果によると、千曲川、阿武隈川流域で100年に1度と想定される量を超えていました。 私たちの研究グループでは、気候モデルによる推計値を利用して20世紀と21世紀の雨の降り方を比較したことがあります。1年のうち一番雨が多かった日の降雨量について、そうした豪雨が何年に1度の確率で降るかを示したグラフを見てください。これによると、20世紀には100年に1度の頻度だった豪雨が、21世紀には約30年に1度になってしまいます。 (編集部註:外部配信先ではグラフを全部閲覧できない場合があるので、その際は東洋経済オンライン内でお読みください) ――とんでもない大雨がよりひんぱんに来る、ということですか。 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、1981~2000年には20年に1度しか起こらなかった大雨が、2046~2065年には十数年に1度、2081~2100年には8~10年に1度、平均すると生じるようになる、とも指摘しています。洪水の場合、地域により違いが大きいのですが、日本付近では、20世紀における100年に1度の洪水が21世紀には10年に1度程度になるという研究結果も示されています。 ――豪雨の頻度が高まるのは、地球温暖化のせいですか。 人間活動による二酸化炭素などの温室効果ガスの排出が増加してきたため、産業革命前に比べ、地球全体の平均気温がすでに1度上昇しています。このため、豪雨がより激しく、頻度もより高くなっています。 ■地球温暖化がもたらす台風のいや~な傾向 ――気温が上がっているのは、人間活動による地球温暖化ではなく、ヒートアイランド現象であると耳にしたこともあります。 東京では20世紀の間に気温が約3度上昇していますが、そのうち地球温暖化による寄与分は約1度、残りの2度分はヒートアイランドの影響であるとされています。東京のような巨大都市では、地球温暖化による影響がヒートアイランドでさらに悪化しているのです。
水害がここまで広大な地域に及ぶとは、誰が予測できただろうか。台風19号は10月24日時点で71もの河川で堤防が決壊し(国土交通省調べ)、13都県で死者80人以上、浸水家屋6万棟を超える被害をもたらした。気候変動と風水害の研究の最前線に立つ東京大学未来ビジョン研究センターの沖大幹教授に大水害時代にどう向き合うべきかを聞いた。
■20世紀の「100年に1度」が21世紀には「30年に1度」にも
――台風19号による雨量は、「100年に1度」のレベルを超えた、と報じられました。防災科学技術研究所が発表した分析結果によると、千曲川、阿武隈川流域で100年に1度と想定される量を超えていました。
私たちの研究グループでは、気候モデルによる推計値を利用して20世紀と21世紀の雨の降り方を比較したことがあります。1年のうち一番雨が多かった日の降雨量について、そうした豪雨が何年に1度の確率で降るかを示したグラフを見てください。これによると、20世紀には100年に1度の頻度だった豪雨が、21世紀には約30年に1度になってしまいます。
(編集部註:外部配信先ではグラフを全部閲覧できない場合があるので、その際は東洋経済オンライン内でお読みください)
――とんでもない大雨がよりひんぱんに来る、ということですか。
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、1981~2000年には20年に1度しか起こらなかった大雨が、2046~2065年には十数年に1度、2081~2100年には8~10年に1度、平均すると生じるようになる、とも指摘しています。洪水の場合、地域により違いが大きいのですが、日本付近では、20世紀における100年に1度の洪水が21世紀には10年に1度程度になるという研究結果も示されています。
――豪雨の頻度が高まるのは、地球温暖化のせいですか。
人間活動による二酸化炭素などの温室効果ガスの排出が増加してきたため、産業革命前に比べ、地球全体の平均気温がすでに1度上昇しています。このため、豪雨がより激しく、頻度もより高くなっています。
■地球温暖化がもたらす台風のいや~な傾向
――気温が上がっているのは、人間活動による地球温暖化ではなく、ヒートアイランド現象であると耳にしたこともあります。
東京では20世紀の間に気温が約3度上昇していますが、そのうち地球温暖化による寄与分は約1度、残りの2度分はヒートアイランドの影響であるとされています。東京のような巨大都市では、地球温暖化による影響がヒートアイランドでさらに悪化しているのです。