アメフト部では、女子マネジャーの盗撮が当たり前なのか――。
【写真】第1の事件が起きた立教アメフト部2015年夏合宿
10月15日に慶應大学アメフト部が無期限活動自粛を発表したことで発覚した、複数部員による「女子マネジャー盗撮事件」が波紋を呼んでいるが、立教大学アメフト部でも同様の事件が起きていたことが「週刊文春デジタル」の取材により明らかになった。
《学生部長から、学生団体の事件について、報告がなされた。体育会アメリカンフットボール部夏合宿において、2015年度・2016年度・2017年度の3年間にわたり、盗撮行為がおこなわれた》
これは立教大学アメフト部内で発覚した盗撮事件について、2017年9月28日に開かれた学部長会の議事録からの引用だ。
「週刊文春テシタル」か独自て入手した立教アメフト部盗撮事件に関する資料 文藝春秋
「学部長会には各学部長、総長、総長室長などおおよそ30名が出席します。毎週行われる定例会議で、大学の最高意思決定機関です」(立教大学関係者)
議事録には加害部員の実名や、悪質で計画的な盗撮行為の詳細が、加害者や関係者へのヒアリングをもとに9ページにわたって克明に報告されている。この事案を大学幹部がどう処理すべきか話し合った内容までが記されているが、結局のところ、この”犯罪”は現在でも公表されていない。
立教大学体育会アメリカンフットボール部「St.Paul’s Rushers」は1934年創部。現在は選手、マネジャー、トレーナーを合わせて部員は120名を超える大所帯で、全日本大学アメリカンフットボール選手権大会で4回の優勝を誇る強豪チームだ。
立教での盗撮事件も、慶應アメフト部同様、夏合宿の最中に起きていた。
第一の事件は2015年8月、19時30分~20時45分頃、山梨県内にある宿泊施設の女子風呂で起きた。アメフト部員A(当時2年)が夏合宿中の女子風呂をスマートフォンで動画盗撮。B(3年)、C(2年)、D(2年)の4人が覗き行為と盗撮を行い、その後、4人はLINEで盗撮動画を共有したという(※議事録では実名)。
《Aが、屋外から女子風呂をスマートフォンで動画盗撮。当該場所は洗濯場の近くの茂み。B・C・Dは、洗濯場の外で話をしていたところ、当該茂みがガサガサと音がしたことによりAの存在に気付く。Aは、動画盗撮を継続。B、C、Dは、その場で覗き行為。その後、Aは、筋トレ目的のためその場を離れる。B、C、Dは、その場に留まる。Cは自身のスマートフォンで動画盗撮を継続。当該4名は、盗撮終了後の当日夜に4名内のLINEのグループを作成。夜23時過ぎから撮影した動画を当該LINEグループ内で共有》(議事録より)
Aは《自分とB先輩と、同期のDとCの4人が現場にいた。最初は自分のスマートフォンで盗撮した。自分は、その後筋トレに行った。その後はCが盗撮した。当時4人のLINEのやりとりがあるので確かだ。当時4人のLINEのやりとりがあるので大学に提出する》と供述している。Bの話によれば、《外を散歩していたら、Aがいて「覗けますよ」と言ってきたので、止めることをせずに一緒に覗いた》という。
Dは「自分の彼女がアメフト部内にいるので自分の彼女は撮影しないよう依頼し、止めることはしなかった」と話している。BやCも同様に盗撮を認めている。
4人は「共有された動画データはスマートフォンに保存したが、現在は機種変更をしており、当日のデータは完全に消去されていて手元にない」とし、インターネットや他人への公開は否定した。
「主犯格のAはディフェンスに定評があり、系列高校から入学した選手でBと共にその後、部の幹部も務めた人物です」(立教アメフト部関係者)
この翌年と2年後にも同じ加害者により盗撮事件が実行される。2度目、3度目は突発的なものではなく、犯行は計画的で悪質化していくが、詳細は別記事で報じる。
学校側が事件を把握したのは3年目の2017年。Aが退部となった他、その後に学生コーチとなったBはコーチ辞職、CやDには無期限活動停止という処分が下っている。
大学内で起きた事案とはいえ、これはれっきとした性犯罪だが、立教大学は部員の処分の公表も行っていない。
学部長会では盗撮事件について、次のような意見が交わされた。
《部の活動を停止し、大会への参加を見合わせると対外的な説明が必要となり、女子学生にとっては、盗撮され、更に盗撮された事実が公表されることになり、それは非常に耐えがたいことである》
《社会において、同様の事件が起こった際にどのように判断していくかを考えた時に、女性の構成員が少ないこの部長会(会議体)で議論しても良いのか。男社会の中で収めているように見える》
《当事者本人は出場していないが、アメリカンフットボール部が試合に出続けているのはどうなのか。大学としての処分が軽いのではないか》
《盗撮の事実が公になるのは避けるべきではないかと考えている》
《本件は性犯罪の事件で、公表すると被害者の学生に二次的被害が及ぶ案件であるが故に加害者の処分を軽くして良いのかということだと思うが、事件の重大性からみると軽い処分である印象を受ける》
《留学先の大学に迷惑をかけるのは、アメリカンフットボール部の学生であり、真摯に勉学に取り組む姿勢が希薄である。今回の事件とは関係ないが、部の雰囲気への不信があり、部を取り巻く体質にも問題があるのではないか》
《隠蔽しようとしたことに対してなぜこのような行動が起こったかは考えられておらず、実際に学生らが取った行動は組織を守ろうとすることで、そのような行動がとれるのは、この問題が性犯罪であるという認識となぜその認識を持てなかったのかとの検討を本気でしようとしていないからである》
学部長らからは厳しい意見も上がっていた。だが結局、立教大学は盗撮事件についても処分内容についても一切公表していない。
前出の立教大学関係者は次のように憤る。
「吉岡知哉総長(当時)のひと声が大きかったと記憶しています。アメフト部の体質については憂えつつ、『被害者を守る』『チーム全体の連帯責任という形は望ましくない』と公表しない方向へ舵を切ったのです。アメフト部の部長は退任しましたが、ほとんどのチーム関係者は責任を問われず、何事もなかったようにチームもリーグ戦に出続けています。あくまで学生に対する教育的観点から、穏便な処分が下されたわけですが、大学生は子供じゃない。彼らを大人として扱い、自覚を促すことで初めて本当の意味でのスポーツマンシップや自浄作用が生まれるのではないでしょうか。
いま学内では上層部への不信感が蔓延しています。今回、アメフト部に無期限活動自粛を課した慶應大学の対応を見て、立教大学も同様に社会的な制裁を受け、あらためて事件と向き合うべきだと考えている関係者は多いのです」(前出・大学関係者)
議事録も隠蔽の兆候が見てとれる。
《処分対象が在籍する学部では教授会で共有いただいているところであるが、それ以外の学部・研究科においては執行部、部局においては管理職レベルで口頭にて報告を行い、不必要に流れないように情報管理を行うとの確認がなされた。なお、報告後資料は回収とされた》
当時、非公表へ舵を切った吉岡前総長を直撃したが、「ノーコメント」。立教大学に事実確認を求めたところ、広報課が文書でこう回答した。
「大学当局としても重く受け止め、不適切行為のあった学生に対して、厳正な処分と指導を行い、再発防止をはかっています。ただし、プライバシー保護のため、具体的な内容は公表しないこととしております」
関東学生アメリカンフットボール連盟は10月17日に臨時理事会を開き、慶應アメフト部について、1部リーグの今シーズン終了時の戦績にかかわらず最下位扱いとする措置を決定。これにより、慶應は来シーズン2部リーグへ降格する。だが、同じく1部リーグに在籍する立教アメフト部でも同様の盗撮事件が起きていた。ボロボロと表面化し続けている学生アメフト界の失態について、指導者や周囲の大人たちはどう考えているのだろうか。
(「週刊文春デジタル」編集部/週刊文春デジタル)