台風19号で住宅街が浸水被害に遭った光景に、心を痛めている人が岡山県倉敷市にいる。昨年7月の西日本豪雨で被災した真備町地区の槙原聡美さん(40)は片付けに追われる中、思いの詰まった品を処分したことを今も悔やむ。「思い出の品は諦めず、捨てないでほしい」と話している。
真備町川辺の自宅が2階まで水に漬かった槙原さんは「一番捨てて後悔しているのは母子手帳」と話す。再発行できると聞いて処分したが、2人の子どもの成長を記した助産師の書き込みは、もう見ることができない。
写真も泥水に漬かって捨てるつもりだったが、友人が「洗ってあげる」と一部を引き取ってくれたおかげで、手元に残っている。色落ちした写真に当時の恐怖もよみがえるが、「それでも残っていることが心の支えになる」という。
槙原さんは昨年10月、住民が交流する拠点づくりを担う団体を立ち上げた。そこで耳にしたのは、片付けを手伝うボランティアに遠慮し、細かい指示を出せず思い出の品を処分してしまった経験だ。
家財を処分する際、「ボランティアや周囲の人が一声掛けてあげるといい」と力を込める。「被災すると本当に必死だと思う。焦るだろうが、一つ一つ選んで片付けをしてほしい」と話した。