台風19号を避難所でしのごうとしたホームレスの男性の利用を東京都台東区が拒んだ問題は、「人の生命及び身体を最も優先して保護する」とする災害対策基本法の理念をないがしろにする自治体の存在を浮き彫りにした。だが、そんな自治体ばかりではない。ホームレスの当事者を支援するNPO法人「TENOHASI(てのはし)」の清野賢司事務局長(58)は、「豊島区は誰でも受け入れた」と振り返る。【遠藤拓】
台風19号が猛威を振るった12日。清野さんら「てのはし」の関係者6人は、午後4時半ごろから東池袋中央公園で、ホームレスの人にアルファ米や缶詰などを配り始めた。2003年の結成以来、月2回ペースで続けていた炊き出しの日。中止することは事前にチラシなどで告知していたが、それでも訪れる人のため、いつもの場所で待機していた。
しばらくして、近くの商業ビルで雨風をしのぐ人が大勢いるのに気づき、区が開設する避難所の存在を伝えて回ることにした。顔見知りのホームレスの人もいれば、たまたま池袋を訪れたらしい若者や高齢の夫婦も。避難所で最も近い区役所への道案内も買って出た。
清野さんたちは午後10時半ごろまで公園周辺や区役所を行き来した。最終的に、何人を避難させられたかは分からない。でも、計46人に食料を渡しながら避難所の存在を告げ、計26人を区役所まで案内したという。
区防災危機管理課によると、避難所は12日午前9時~13日午前8時半に開設し、8カ所で訪れた人を誰でも受け入れた。トラブルは特になかったという。
清野さんは「区が訪れた人を分け隔てなく受け入れたのは評価できる。目の前の人を守るのは自治体のあるべき姿勢だ」と指摘する。
一方の台東区は、12日に避難所を訪れた2人の当事者に対し「住所がない」との理由で受け入れを拒否し、問題となっている。清野さんは「台東区はある種の属性の人は守らなくていいと宣言したに等しい。私は『人命軽視事件』と呼んでいる」と非難した。