人間ドックなどで、さまざまな検査を受けている人が増えている。上皇后美智子さまが「定期検診」で胸に腫瘍が見つかったことからも明らかな通り、現代人が健康を維持するのに検査は欠かせないものとなっている。
【ランキング】医師が「受けたくない」検査TOP12
その一方で、専門家すら受けることに首をかしげる検査もある。
本紙・女性セブンは、医師200人を対象に、医師自身が「受けたい」「受けたくない」検診・検査は何なのかを徹底取材した。幅広い診療科の医師が匿名を条件に答えたアンケートを読み解くと、検診・検査における私たちがとるべき“最適解”が見えてくる──。
調査の結果、「受けたい」検査1位は血液検査となった。2位以下のラインアップを見ると、「受けたい」「受けたくない」の両方にランクインしているものがいくつか存在する。特に「大腸内視鏡」をはじめとした内視鏡検査の名前が目に入ってくる。
医療に詳しいジャーナリストの村上和巳さんは、こんな推察をする。
「内視鏡検査は、熟練の専門医が行えば短時間のうちにスムーズに終わり、苦痛もほとんどありません。しかし、医師の腕によっては苦しんだり、時間がかかってしまったりすることもある。“ピンキリ”だということを医師たちが知っているからこその結果だと思います」
とはいえ内視鏡検査は、がんなどの病変があれば医師が直接見て発見できるうえ、小さいものならばその場で切除することもできる。毎年でなくとも受けておくべきだ。
「大腸内視鏡は40代後半になったら一度は受けてほしい。専門医が腸内を見ると、ポリープができやすいかどうかなど、その人の腸がどんな傾向を持っているか、ある程度わかります。ポリープができにくい人であれば、検査は2~3年に1度でいいといわれる場合もある。大腸がんは日本人の死亡原因の上位でもあるから、積極的に受けてほしい」(村上さん)
一方で、「受けたくない」部門の1位にその名が挙がった腫瘍マーカーと胃バリウム検査には「あてにならない」「大変なわりに効果がない」といった辛辣な意見が多く見受けられた。
村上さんも「バリウム検査は受けたくない」と声をそろえる。
「バリウムをのんだり、検査後に下剤で出すのは時間もかかるし、大変です。さらに、撮影した画像から病変がないかチェックする『読影』という作業は医師の腕に左右され、見落としの可能性があります。内視鏡も現在は医師の目による確認ですが、人工知能(AI)で解析する試みが行われており、近い将来に実用化される見込みです」
つまり、今後さらにバリウムと胃内視鏡の精度の差は開いていくことが予想される。新潟大学名誉教授で医師の岡田正彦さんは被ばくリスクの有害性を指摘する。
「比較的被ばく量が少ない検査である胸部レントゲン検査すら、欧米の研究によれば『肺がん患者を減らすどころか1割増やしている』との報告があります。バリウム検査の被ばく量はなんとその100倍以上ともいわれており、メリットより害の方が大きくなると考えられます」
胃がん検診を受ける際は、バリウムより胃内視鏡検査を選択した方がよさそうだ。
【調査方法】〇医師200人が明かす『受けたい検診・検査ランキング』 医師200人が「医師として自分が受けたい、もしくは受ける必要があると考える検診・検査」の項目を推奨度順に3つ回答。推奨度が高い順番に3点、2点、1点とポイントをつけて計上した。なお、肩書の「その他」は所属する科がなかったり、現在研究機関に勤務していたりするなどの医師。
〇医師200人が明かす『受けたくない 受ける必要がない検診・検査ランキング』 医師200人が「医師として自分が受けたくない、もしくは受ける必要がないと考える検診・検査」の項目を推奨度順に3つ回答。受けたくない順に3点、2点、1点とポイントをつけて計上した。なお、肩書の「その他」は所属する科がなかったり、現在研究機関に勤務していたりするなどの医師。
※女性セブン2019年9月12日号