熊本地震で中断の「お法使祭」再開 「途絶えさせてはいけない」若い力が地元動かす

熊本地震で甚大な被害を受けた熊本県益城町の津森神宮の祭り「お法使祭(ほしまつり)」が30日、2年ぶりに開かれる。益城町と菊陽町、西原村の近隣12地区が毎年持ち回りで実施してきたが、昨年は益城町でも特に被害が大きい平田地区が当番区だったため実施を断念。しかし「祭りを続けたい」という熱い思いが地元の人たちを動かし、若い力が再開に向けて立ち上がった。【山本泰久】
祭りの当番区は、それぞれ地区内に「お仮屋」を建ててご神体の「オホシサン」を1年間安置。翌年にご神体を神輿(みこし)に載せて次の当番区へ「受け渡し」する。約600年続く祭りといわれ、昨年、熊本県の重要無形民俗文化財に指定された。
祭りを続けてきた3町村とも2016年の熊本地震で被害を受けたが、16、17年は比較的被害の小さい菊陽町の地区が当番区だったため何とか実施できた。しかし、18年は家屋の大半が全半壊した平田地区が当番区だったため、ご神体は地区のお仮屋に移したものの神事などは見送らざるを得なかった。
今年も祭りを執り行う「お法使屋会」だけではご神体を載せた神輿を次の当番区の田原地区まで運ぶ人手が足りず、祭り実施が危ぶまれた。しかし、会のメンバーではない平田地区の有志が「祭りを途絶えさせてはならない」と手伝いを買って出た。
まとめ役の村上洋助さん(53)は「祭りを続けたいし、12年後に再び祭りの当番区が回ってくることも考えた。祭りを楽しみにしているお年寄りも多い」と話す。消防団などに声をかけ約20人が祭りを手伝う予定という。

祭りは30日午後1時、平田地区のお仮屋でご神体を神輿に載せる遷宮祭で幕を開け、平田、田原両地区の境界でご神体を受け渡す午後3時の「受け渡し場神事」、午後5時の遷座祭へ続いていく。
お法使屋会の嶋田修一会長は「従来の祭りが、けがなく順調に引き継がれていけば」。同会の中村保久顧問は「祭りで元気をつけたい。1度は途絶えたが復活すれば最高だ」と若い力に期待する。
祭りを実施する3町村は高齢者が多く、人口は減り続けている。祭りには多額の費用もかかり、今後継続していけるか不安は残る。「これからの祭りのやり方、考え方を今の時代に合ったものにしていかないと」と同会の村上高志事務局長。
お法使屋会では当番区の負担を少しでも減らそうとクラウドファンディングでも支援を呼びかけている。支援希望者は11月10日までhttps://camp-fire.jp/projects/view/198035ヘ。