「明浄学院」21億円不明の資金流用、元理事長ら立件へ詰めの捜査

学校法人「明浄学院」(大阪府熊取町)で、土地売却の手付金21億円が所在不明になるなどした資金流用疑惑で、大阪地検特捜部は29日、法人などの関係先を業務上横領の疑いで家宅捜索し、関係者から任意で事情を聴いた。一連の不正は元理事長の女性(61)が主導したとみられ、特捜部は元理事長らの立件に向けた詰めの捜査を進める。
他に捜索を受けたのは、21億円を預かっていたとされる不動産仲介会社「サン企画」(同府吹田市)や関係者の自宅など。元理事長と同社社長らについて、元理事の男性らが、業務上横領や背任の疑いで特捜部に告発していた。
複数の関係者や法人の説明によると、元理事長は昨年4月、別の理事らに指示し、経営する大阪観光大(熊取町)の運営資金1億円を仮想通貨(暗号資産)の購入に流用。この通貨は取引価格が暴落し、ほぼ無価値になったとされるが、実際の購入額は分かっていない。
明浄学院高校(大阪市阿倍野区)の土地売却を巡っても、手付金21億円が行方不明に。法人は2017年7月、土地の一部(約7300平方メートル)を大阪市内の不動産開発会社に約32億円で売却する契約を結び、手付金として受け取った21億円全額を、土地取引を仲介したサン企画に預けた。即日、元理事長の知人が経営するコンサルタント会社に全額が送金されたとみられ、その後の所在が分からなくなっている。この不動産開発会社も捜索された。
一方、法人の内部資料には、土地売買契約の1年前、サン企画の関連会社が法人に4億円、不動産開発会社の関連会社も1億円を寄付したと記載。元理事長は5億円について「自分が獲得した」と周囲に吹聴していたというが、サン企画の社長は寄付していないと取材に証言している。
特捜部は今後、押収資料を分析し、こうした不透明な経営実態や資金の流れの全容解明を進める。【松本紫帆、山本康介、藤河匠、加藤栄】