サイバーエージェントは10月30日、2019年9月期の決算発表を行った。連結売上高は過去最高を更新し、4536億円となった。また、Abema TVでは過去最高の視聴者数を獲得。本業であるインターネット広告事業では景況感の見通しが不安な現状を踏まえ、今期は成長を続けるAbema TVでの変革を掲げた。
19年9月期は、連結売上高が4536億円と前期比8.1%増。営業利益は308億円で、Abema TV事業における203億円の赤字が響いた。ただ、Abema TVの赤字幅は年々減少傾向にあり、「20年9月期では170~180億円くらいまで赤字額を圧縮したい」と藤田晋社長は話した。
主要事業のインターネット広告事業では、売上高が前期比8.4%増の2602億円へ増加したが、営業利益は前期から減少。「肌感覚では、業界全体であまり良くない」(藤田社長)とされる同分野では19年9月期、新規顧客の開拓を行った。また、コンテンツの内製化を進めるための投資も行っており、今期はクオリティーコントロールを実現しながら新規顧客の取扱高の増加を狙っている。
今や同社の旗艦事業ともなりつつあるAbema TVでは、「視聴者数」ともいえる、1週間当たりのアクティブユーザー数(WAU)が初めて1000万を突破。「Abema TVの開局以来、1000万WAUを目標に掲げてきた。毎年200億円規模で投資をしている事業なので、これくらいの規模にできないと意味がない」と藤田社長が話す通り、1つの節目を迎えた。
最も見られたコンテンツは?
1000万WAUを達成した要因については「ニュースがあった際には会見などをノーカットで放送するスタイルで、『何かあったらすぐAbema TV』という視聴習慣をようやく定着させられ始めている。コンテンツによっては一気にWAUが増えることもあったが、なかなか定着まではさせられていなかった」と藤田社長。19年9月期はタレントの結婚会見や台風の最新状況などをノーカットで生放送。お笑い芸人の宮迫博之さんと田村亮さんの会見を放送した週では、過去最高となる1330万WAUを獲得した。
また、Abema TVはオリジナルコンテンツにも強みを持つ。中でも「恋愛リアリティーショー」と呼ばれるコンテンツは、「女子高校生の3人に2人は視聴している」(藤田社長)と胸を張るほどに若年層へ浸透している。また、ドラマの視聴は9割以上がオンデマンド視聴だといい、こうしたサービスを利用できる有料のプレミアム会員は50万人を突破。当初は広告収入とユーザー課金からの収入比率を「6対4」と見込んでいたが、課金収入が「想定以上」(藤田社長)に増えている。今期はプレミアム会員のさらなる獲得に向けた施策を充実させていくという。
定額制動画配信サービスには、ディズニーやAppleなどが参入し始めている。「競争が激化しているのは事実。キーとなるのはオリジナルコンテンツだと考えている」と藤田社長は話す。Abema TVがこれまでに制作したオリジナルコンテンツは、8000以上だといい、激化する市場でも存在感を示していけると考えている。1000万WAUという1つの目標を達成した今、サイバーエージェントの成長エンジンとしてさらなる進化を遂げられるか。