70歳まで働かされるのか…社会主義化が進むニッポンの愚策

10月25日、官邸主導で進めている「70歳まで働く7つの選択肢」の議論が厚生労働省の部会で始まった。その1週間前、10月18日には厚労省が「年金開始75歳も選択可」とする、年金開始を75歳まで繰り下げる案を提示、来年の通常国会への提出を目指す。

まず、「70歳まで働く7つの選択肢」では、70歳までの就労機会を確保するため、政府は成長戦略に7つの選択肢を盛り込んだ。

① 定年の廃止
② 定年の延長
③ 契約社員などでの再雇用
④ 他企業への再就職実現
⑤ フリーランスで働くための資金提供
⑥ 起業支援
⑦ NPOなどの社会貢献活動への資金提供

65歳まで働きたい人のために①~③はすでに企業に義務付けている。さらに、70歳まで働けるように4つの選択肢を追加し、企業に努力義務を課したものだ。

現行の高年齢者雇用安定法は2013年4月に施行され、それまでの60歳定年から希望者全員65歳までの雇用が義務化された。施行後の65歳定年企業の状況は、18年の「高年齢者の雇用状況」によると、大企業は1532社で全体の9・4%でしかない。人手不足が深刻な中小企業でも2万3685社と16・8%だ。経団連は政府の政策に当然慎重な姿勢を見せる。岡山商科大学の長田貴仁教授が言う。

「高年齢者の雇用は企業にとって人件費増加の懸念が強い。そのため、定年延長や定年廃止に踏み切る企業は少なく、ほとんどは給与の安い再雇用制度を採用している。さらに、70歳までの雇用となると、人件費の枠は決まっているため、若手社員の給与を抑えることになる。高齢者の働く場所の確保もせず、政府は絵に描いたビジョンばかりを打ち出すのは、あまりに企業に頼り過ぎです」

年金開始の75歳選択にしても政府の思惑が透けて見える。支給開始を現在の65歳から75歳へ10年間遅らせることで支給月額が84%増えると政府はうたう。ファイナンシャルプランナーの村井英一氏によれば、年金の開始を遅らせることは決して年金生活者の利益にはつながらないと述べる。

「65歳と75歳支給開始を比較すると、75歳開始の人が65歳支給の人を逆転するのは86歳10カ月です。86歳10カ月を過ぎなければ65歳支給の人を上回れないのです。男性の平均寿命は81歳、健康寿命は72歳です。年金受給は75歳と言わず、早めの開始が安心でトクだということです」

人生100年時代の喧伝にいとまのない政府だが、年金開始の繰り下げ、70歳まで働かせることで長期にわたる所得税確保と、年金支給の遅延、減額にあることは明らか。先の長田教授がこう述べる。

「70歳まで雇用しても、シニアにマッチングする仕事を政府は提供できるのか。政府が現実にそぐわない政策を企業や国民に押し付けるのは、失敗した社会主義の繰り返しです。いまの日本は悪しき社会主義化が進みつつあります」

日本の未来が思いやられる。

(ジャーナリスト・木野活明)