免許返納が急増 池袋暴走、高齢ドライバー対策の転換点

東京・池袋の車両暴走事故が発生した今年4月以降、東京都内で運転免許証を自主返納したドライバーは10月末までの7カ月間で4万2252人に上り、前年同期(2万3473人)の1・8倍となった。9割超が65歳以上の高齢者で、警視庁は「事故を契機に安全運転の意識が高まっている」と分析する。運転できる条件を安全機能搭載車などとする限定免許の導入も検討されており、高齢ドライバー対策は大きな転換点を迎えている。
警視庁運転免許本部によると、都内の返納者は今年に入り計5万3690人(10月末時点)で、65歳以上の返納が過去最多となった平成29年の年間返納者数の4万6289人を大きく上回った。池袋の暴走事故前後には、俳優の杉良太郎さん(75)や歌手の加山雄三さん(82)らも返納し、「著名人の動きが報道されたことも追い風になった」(警視庁幹部)という。
ただ、公共交通網が十分に整備されていない地域では、車が高齢者の「生活の足」となっており、返納を呼びかける上で課題となる。警察庁が27年に実施した調査では、返納をためらう75歳以上(約450人)のドライバーの7割近くが「車がないと生活が不便になる」ことを理由に挙げている。
自治体もタクシー券の支給やコミュニティーバスの運行などの対策を進めるが、追手門学院大の東正訓(ひがし・まさのり)教授(交通心理学)は「利便性はマイカーに劣り、効果には限界がある。自動運転技術が期待されるが、現状では運転条件に医師の定期診断などを導入するのが現実的だ」と指摘する。
池袋の事故では、警視庁が事故原因をブレーキとアクセルの踏み間違いと結論付け、12日、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の疑いで車を運転していた旧通産省工業技術院の飯塚幸三元院長(88)を書類送検した。同様の操作ミスは高齢ドライバーに特徴的で、10月には愛知県あま市の喫茶店に70代男性の運転する乗用車が突っ込み、9人が負傷。北海道江別市でも8月に70代の男性の車が弁当店に突っ込んだ。
踏み間違いを防ぐには、「急加速抑制装置」が効果的とされ、政府は6月に高性能のブレーキ装置を普及させるため、性能認定制度の導入を打ち出した。新車に自動ブレーキ搭載を義務化する方針も示した。
また、急加速防止機能を持つ「安全運転サポート車」のみ運転できる限定免許の創設など免許制度の見直しを進め、今年度中に導入の可否がまとまる見通しだ。高齢ドライバーの運転技能を確認する実車試験導入も検討されており、実現すれば高齢ドライバーの事故リスク低減が期待される。