元国税芸人さんきゅう倉田の「役に立ちそうで立たない少し役に立つ金知識」 第124回 110万円の贈与なんて、名義預金だってすぐバレるよ

元国税局職員さんきゅう倉田です。好きなPEは「Permanent Establishment」です。

寒くなってくると、すぐにクリスマスを想像してしまいます。クリスマスといえば、プレゼント。プレゼントといえば贈与です。クリスマスプレゼントには、贈与税がかかるのでしょうか。贈与税がかからないとされる「年末年始の贈答」に含まれるのか、微妙なところです。

今回は、贈与税について。
よくある素人の贈与
贈与税に、毎年110万円の基礎控除があることを知り、子供に預金口座を新たに作らせ、そこに毎年110万円ずつ入金する人がいます。相続や贈与に強い税理士の先生が言っていました。

「相続税の税務調査で、必ず、名義預金を疑われます」

名義預金とは、名義は子供でも、実際に管理しているのはその親であるような預金です。これの何がいけないか。相続税の税務調査時に、子供の預金が名義預金とされると、毎年行っていた贈与がなかったことになってしまう点です。

贈与がなかったことになると、相続財産が増えてしまいます。みなさん、将来の相続財産を減らすために、贈与税のかからない範囲で贈与している(つもり)なのに、それが水泡に帰してしまう。

110万円を子供の口座に移していれば、管理するのは自分でもバレないだろう、と考える人はたくさんいます。浅はかです。

子供に聞けば、すぐに分かります。たとえ、子供が「自分で管理してました」と言ったって、「では、なぜ、まったく使っていないんでしょうか」とか「どこで管理してましたか」と問い詰められれば、すぐにボロが出てしまいます。

自分が亡くなってから、自分の子供が、税務調査で追い込まれたら、悲しくありませんか。分かりやすい名義預金は止めて、客観的な贈与の事実を示しましょう。
誰でもできる贈与のポイント
一部には、毎年、同じ金額を同じ時期に贈与すると、贈与として認められない、と思っている人がいます。まったくそんなことはありません。毎年100万円を決まった日に渡していても、贈与の事実があればちゃんと認めてもらえます。

贈与するときのポイントを以下にまとめました。
1. もらった人に、贈与を受けた認識があること
口座だけ作らせて、通帳やカードを預かって、勝手に入金していませんか?そういうのを「贈与」とは言いません。
2. お金の管理、処分をもらった人が行うこと
親が通帳とカードを預かっていて、せっかく贈与されているのに、子供はお金を使えないなんてことがあります。それは、本当に贈与なんでしょうか?親の口座から、子供の口座にお金を移しただけで、贈与とは言えないかもしれません。
3. 銀行印はもらった人の印鑑を使うこと
贈与のために、新しく口座を作ることがあります。そのときの印鑑はどうしていますか?姓が同じなので、子供の口座なのに親の印鑑を使っていませんか。
4. 振込にする、契約書を作るなど、証拠を用意すること
現金手渡しでは、本当に贈与があったかどうかわかりません。あなたが「贈与したよ」、子供が「贈与されたよ」と言っても、客観的な証拠がないと、認めようがありません。振込にして、贈与契約書を作成して、他人から見てわかるようにしましょう。

5. 110万円を超える贈与で、贈与税の申告をすること
贈与の事実を証明するために、あえて、贈与税を納める人もいます。例えば、111万円を贈与して、贈与税の申告をし、1000円だけ納めるような場合があります。200万円とか500万円とか800万円で申告する人もいます。

気をつけなくてはいけないのは、申告したからといって、贈与が認められるとは限らないことです。

贈与は、申告だけでなく、その他の事情を総合勘案して判断されます。逆に、申告がなくとも、贈与が認められることもあります。

給料が上がり、生活費や遊興費では使い切れないくらいの資産がある人は、将来の相続のことを考えます。そんなときに誰でも簡単にできるのが生前贈与です。ポイントを押さえて、正しく贈与しましょう。

さんきゅう倉田
芸人、ファイナンシャルプランナー。2007年、国税専門官試験に合格し東京国税局に入庁。100社以上の法人の税務調査を行ったのち、よしもとクリエイティブ・エージェンシーに。