無断キャンセルか、登山中のトラブルか…山小屋「無事なのか心配」

紅葉シーズンを迎えている山梨県内の山で山岳遭難が急増している。不十分な装備や安易な計画で道に迷う登山者が後を絶たず、県警は注意を呼びかけている。(鈴木経史)
17日午後8時45分頃、北杜市の

瑞牆山
( みずがきやま ) (標高2230メートル)を下山していた千葉県の50歳代の男女から「道に迷った」と110番があった。携帯電話から全地球測位システム(GPS)で位置を確認した北杜署員が救助に向かい、午後11時半頃に発見した。2人にけがはなかった。
2人が登山を始めたのは午前11時頃だった。往復約5時間半を要するコースで、下山は早くても夕方になる。ヘッドライトを持っていたものの、辺りが真っ暗になり道を見失った。
県警地域課によると、山岳遭難は今年、10月末現在で150件169人に上り、1965年の統計開始から最多だった2017年同時期の135件146人を大きく上回っている。
今月は道迷いによる遭難が目立つ。日照時間が短くなる中、十分な装備を持たずに入山し、下山中に日が沈んで身動きが取れなくなるケースがほとんどだ。
16日午後4時55分頃には、身延町の富士見山(標高1640メートル)で、静岡県浜松市の男性(59)が道に迷って遭難したと通報があった。周囲は既に暗くなり始めていた。男性は翌17日早朝に県防災ヘリ「あかふじ」で救助された。男性にけがはなかった。
日本山岳救助機構(東京都)によると、民間ヘリによる救助費用は一般的に「捜索1分につき1万円」とされる。数百万円を要するケースもあるという。
「あかふじ」や県警ヘリ「はやて」が救助にあたった場合、費用は請求していないが、埼玉県では昨年1月から条例で県防災ヘリによる遭難救助に5万円程度の手数料を設けている。
遭難が増えていることについて、県山岳連盟の小宮山稔会長は「インターネットで登山ルートを写真付きで紹介しているサイトもあり、簡単に登れそうだと思ってしまうのでは」と話す。
10月の台風19号などの影響で、今年は登山道上の看板やテープなどの目印が外れてしまっている場所もある。県警地域課の担当者は「日没時間を意識し、登山道の状態など事前に情報収集をして、ゆとりを持った計画を立ててほしい」としている。

山小屋では今年、予約を無断でキャンセルする登山者が相次いでいるという。
南アルプスの鳳凰三山にある鳳凰小屋では7月、10人以上の団体客が連絡もなくキャンセルした。山小屋から確認の電話をすると、「登山に行かなかった」との答えだった。
山小屋ではキャンセル料を徴収していないが、人数分の食事を用意して準備していた。みそ汁などを廃棄しなければならなかったという。同様のケースが続いたため、ブログなどで注意を促した。管理人の細田倖市さん(78)は「単純な無断キャンセルなのか、登山中にトラブルがあったのか分からず、心配してしまう」と困惑した様子で語る。
北岳の山小屋でも無断キャンセルが続き、当日午後にキャンセルの連絡が入ることもあった。管理人の女性は「天候不順で直前に登山をやめる人が多かったようだ。台風の影響もあり、どこの山小屋も売り上げが落ちている」と話した。