ナウマンゾウの化石発掘 静岡・草薙の13万年前の地層から 分布域解明に期待

静岡県立博物館「ふじのくに地球環境史ミュージアム」は22日、静岡市清水区草薙の有度丘陵の草薙川沿いで、絶滅したナウマンゾウの牙(切歯)の化石が13万年前ごろの地層から見つかったと発表した。牙の化石がほぼ完全な形で見つかったのは県内初。13万年前の地層からの発見は全国的にも例が少なく、博物館は「ナウマンゾウの分布域の推定や特徴を解明するのに役立つ貴重な発見」と説明している。
博物館によると、見つかったのはナウマンゾウの右上顎(あご)の牙。全長1・8メートル、重さ30キロ。雌の可能性が高いとみられる。博物館と連携するNPO法人「県自然史博物館ネットワーク」の会員、宮沢市郎さん(71)=静岡市駿河区=が今年5月25日に発見した。
ナウマンゾウは40万年以上前から2万年前まで生息していた大型哺乳類。北海道から九州まで200地点以上で化石が発見されている。県内でも浜松市、牧之原市、静岡市で化石の発見例がある。13万年前の地層からは、千葉県佐倉市でも化石が見つかったことがある。
博物館は標本として保管するため、化石の汚れを取り除き、接合作業をした。記者会見した博物館の内野昌美副館長は「保存状態が良く、学術的にも貴重な標本」と評価した。
発見者の宮沢さんは子供のころから化石に興味があり、会社員だったころも休日に県外などに化石の採集に出かけていた。今回は化石の一部を見つけて土の中から取ろうとしたところ、長さがあり、さらにつながっているのが分かったため「牙らしいものがある」と同ネットワークの職員に連絡した。
「これが見つけたかった。3年前から探していた。ようやく出会えた。突き当たった」と宮沢さん。化石の発見は「砂浜に落とした10円玉を見つけるようなもの。宝探しのようで、見つける楽しみがある」。今後の目標は「県内で恐竜の化石を見つけたい」と言う。同ネットワークの天岸祥光理事長は「もう1本の牙もあるのではないかと期待している」と夢を描く。
発見された化石は30日から来年4月5日まで、同博物館(静岡市駿河区大谷)で開催する企画展で一般公開する。【山田英之】