入院生活でストレスを抱える子どもに寄り添う「ファシリティードッグ」と会える日を願い、病院や行政に働きかけ続けている小学生がいる。自身も重い病気と闘う福岡県粕屋町の粕屋中央小5年、清武琳(りん)さん(10)。これまでの活動をまとめた手記が「いっしょに読もう!新聞コンクール」(日本新聞協会主催)の小学生部門で最優秀賞に選ばれた。病院や行政にいまだ願いは届かないが、受賞を受けて「誰かの役に立ちたい」との思いを強くしている。
清武さんは、生まれつき背骨が左右に曲がる「脊柱(せきちゅう)側湾症」と肋骨(ろっこつ)欠損があり、今も年2回、体の成長に応じて福岡市立こども病院(福岡市東区)で手術を受けている。手術の前日は消灯の時間が過ぎても不安で眠ることができず、泣き出すこともあるという。
昔から犬が大好きで、家ではビーグル犬のチョコ(雄、4歳)と庭でじゃれ合うが、病院に犬はいない。「怖くて緊張するから犬がいてほしい」と清武さん。母菊香さん(52)も「子どもが犬と触れ合って安心したり、落ち着いたりするのを見られれば親も救われる」と話す。
清武さんは昨年10月25日付の毎日小学生新聞で、横浜市の病院で活動していたファシリティードッグの「ベイリー」が引退する記事を読んでその存在を知り、導入に向けて行動を始めた。まずはベイリーに関する本を購入し、インターネットで情報を調べ、病院にファシリティードッグを派遣するNPO法人「シャイン・オン!キッズ」(東京)に資料を送ってもらった。
そして今年7月、福岡市立こども病院の院長宛てに手紙を書いた。
<麻酔の時がとても怖いです。だから、この病院にもファシリティードッグがいたら、どんなにいいだろう、と思いました。お金がかかるので、大変なことは知っています。でも、ぼくは、絶対に、病院に犬がいた方がいいと思います>
病院からは導入は難しいため、代わりにロボットの犬はどうかと勧められた。そこで、清武さんは8月に高島宗一郎・福岡市長にも手紙を書いた。
<ぼくは、アイボ(犬型のロボットの商品名)が100台いるより、ファシリティードッグ1頭の方がいいと思います。どうか、病と闘うぼくたちのために、力をかして下さい>
福岡市からは10月、抵抗力が弱い子どもが感染症にかかるリスクが高まることなどを理由に「難しい」との回答があった。
次の一手はまだ思い浮かばないが、諦めるつもりはない。これまでに集めた資料や自分が書いた作文、新聞記事などをまとめた「ファシリティードッグ導入計画書」はA4判で150枚を超えた。
「誰かの役に立てるのが一番うれしいのかな」と菊香さんは目を細める。清武さんは「手術を繰り返している自分が言った方が説得力があると思う。ファシリティードッグがいる病院を1カ所でも増やしたい」と小さな顔を上げた。【杣谷健太】
ことば「ファシリティードッグ」
病院の医療チームの一員として活動する犬。病院で働くために、見知らぬ人に触られても、子どもたちにきつく抱きしめられても、ほえたりかんだりしないための専門的なトレーニングを受けている。「ハンドラー」と呼ばれる医療従事者とペアで勤務し、手術室までの移動に寄り添ったり添い寝したりする。患者らのストレスを減らし、元気づける効果があるとされる。NPO法人「シャイン・オン!キッズ」によると、これまでにファシリティードッグを導入したのは国内で3病院だけ。