《ク・ハラの“リベンジポルノ裁判”傍聴記録》裁判長が提出を要求した「性的動画」

人気K-POPアイドルのク・ハラ(28)が11月24日に遺体で発見された。ソウル・江南警察署は死因について自殺だと断定している。
ク・ハラは今年5月にも自殺未遂で病院に運び込まれており、その際に「深刻なうつ病」を患っていると報じられた。何がそれほどまでにク・ハラを追い込んだのか。苛烈なSNSでの批判や、親友である元f(x)メンバー・ソルリの自殺など、いろいろな要因が取り沙汰されているが、特に注目されているのが、昨年9月から現在まで訴訟が続いている元交際相手チェ・ジョンボム(28)とのトラブルだ。
現地スポーツ紙「スポーツ京郷」エンターテイメント部の河京憲記者が「ハラとチェの出会いは美容番組だ」と解説する。
「2018年夏、ハラがMCを務めていた韓国の美容番組『マイ・マッド・ビューティダイアリー』にヘアデザイナーとしてチェがゲスト出演したのが出会いのきっかけです。当時、チェは『サロンハーツ』という芸能人御用達の有名美容室で働いていました。韓国で人気の俳優ユ・アイン似の甘いルックスだったこともあり、番組ではハラを含めた出演女性たちがメロメロな様子が放送されていた。出演後にハラからチェにSNSで連絡をして、交際に発展したようです」
そんな美男美女カップルのトラブルが表面化したのは2018年9月13日。午前0時30分頃にチェが「ク・ハラから暴行を受けた」と警察に通報したのだ。

「当初、韓国マスコミはチェが別れ話をしにハラの自宅に出向いたところ、別れに激怒したハラから暴行を受けたと報じていました。そのためハラに批判が殺到した。彼女のSNSは荒れに荒れ、罵詈雑言が浴びせられていました」(韓国芸能関係者)
しかし、後日ク・ハラ本人が自身の名誉回復のために、韓国の芸能情報サイト「ディスパッチ」のインタビューで、自分はチェ・ジョンボムに対して一方的に暴行を働いたわけではないということを証言した。その証言を裏付ける動画も公開され、韓国世論が大きく動いたという。
「まず泥酔した状態のチェが夜中0時半頃にハラの自宅へ押しかけ、寝ているハラに激高し、暴行を働いたことがトラブルの発端になったということでした。チェが怒っていた理由は、ハラが仕事関係の男性と食事に行ったから。怒り狂ったチェは『性的動画をディスパッチに売る』とハラを脅迫したことも明かしました」(同前)
《(口論が始まると)Cさん(注:チェのこと)が悪口を言いながら私を押しました。私もCさんを押し返した。Cさんが『お前、自分が何様だと思って俺のことを押したの? そんな悪口を言って』と言ってもみ合いになり、Cさんが私の髪をつかんで振り回したんです。ホワイトボードで(私のことを)押しのけたし、空気清浄機も投げました。私も(彼を)ひっかきました。身体にあざができるほど、激しく争いました》(インタビューのク・ハラ発言)
ク・ハラはSNSなどで繰り広げられる誹謗中傷に心を痛め、事実誤認を正さなけれいけないと感じたという。

《過ち(チェに暴行したこと)を犯したことは分かっています。ただただ申し訳ありません。話題になりたくありませんでした。こんなことで取材を受けるのは恥ずかしかったです。それでも間違いは正さないといけないと思いました》(同前)
「ハラはインタビューに加え、自宅マンションのエレベーター内で撮影されていた防犯カメラ映像を公開。映像にはチェがハラに性的動画を送信し、それを見たハラが拡散しないようチェにひざまずいて懇願する様子が映っていました。ハラが一方的にチェに暴力をふるったという報道が誤りだったと実証されたのです」(前出・韓国芸能記者)
「週刊文春デジタル」ではディスパッチの社長にも取材を申し込んでいるが、現在のところ回答はない。
騒動は痴話喧嘩では終わらず、ク・ハラ側がチェ・ジョンボムを暴行、脅迫、強要、器物損壊、性暴行犯罪(性的動画撮影)で起訴し、裁判へと発展していった。そして2019年8月29日、第一審の判決が出た。前出の河記者はその裁判を傍聴していたという。
「チェは、暴行、脅迫、強要、器物損壊の罪で、懲役1年6カ月、執行猶予3年の刑が宣告されました。しかし肝心の性暴行犯罪については『証拠不十分』で無罪になっています。判決公判にはハラは出席していなかったのですが、ハラの弁護士が『有罪を認めながら執行猶予を宣告したのは適正な量刑ではない』『罪の償いに見合う処罰を希望する』として控訴。チェ側も判決は不当とし、裁判は控訴審へと持ち込まれました。

印象的だったのは、判決が出る前、チェの最後の陳述で『恋人間のことが社会的にここまで騒がれることになり申し訳ない』とこぼしていたこと。やったことは決して許されることではないが、大騒動に発展してしまって戸惑っているようでした」
当人たちの戸惑いをよそに、事件への反響は益々大きくなっていった。
「チェはもちろんのこと、ク・ハラへの批判もさらに激化し、そのうえ裁判の第1審判決を宣告した裁判長に対しても批判が集まりました。量刑の甘さへの批判もありましたが、特に問題視されたのが、性的動画撮影が罪に問われなかったにも関わらず検察に『2人の関係を確認するために視聴が必要だ』と性動画の提出を要求したこと。深刻なセカンド・レイプだとして、ネット上では裁判長の名前が拡散され、アンチ活動が展開していきました」(同前)
過熱する韓国世論がおさまる兆しはなく、期日がまだ決まっていない第2審への関心も高まっていった。ク・ハラの遺体が自宅で発見されたのは、そんな折のことだった。
「ハラを死に追いやった“犯人”だと、チェに対する批判が爆発的に増えました。2019年5月にチェはヘアサロンをオープンしたのですが、ハラの死後に営業した形跡はなく、店のインスタグラムも非公開になってしまいました」(同前)
被害者亡き後、裁判はどのような展開を迎えるのだろうか。今後の裁判の行方について河記者は「チェにとっては不利な展開になっていく」と推測している。

「控訴審の期日はまだ決まっていません。しかし9月13日、チェが国選弁護士の希望書類と控訴理由書を提出したので、近いうちに裁判が再開されるでしょう。いま法曹界では、ハラの死が“極端な選択(自殺)”だった場合は、第2審でのチェの量刑がさらに重くなるだろうと予測されています」(同前)
ク・ハラの死によって増加したのはチェ・ジョンボムへの批判だけではない。第1審の裁判長への批判も再過熱しているという。
「SNSでの裁判長批判は日毎に大きくなっています。第1審直後は裁判長のセカンド・レイプに対する批判が主でしたが、現在は性暴行犯罪が棄却されたことが問題視されている。韓国では性犯罪について、成立条件が厳しい、量刑が甘いなど、処罰が“加害者寄り”だと言われているんです。
現在、韓国大統領府のサイトには、『加害者中心的な性犯罪の量刑基準を再整備してください』という国民請願に23万人を超える署名が集まっています。これは全請願のうちトップ3に入るほどの数。政府関係者が正式回答をする条件の20万人を達成しているので、何らかの動きがあるだろうと見られています」(同前)
1人の若く、美しい女性の死がきっかけで、韓国国内で大きなうねりが起きている。ク・ハラはこの様子を、どんな思いで眺めているのだろうか。
(「週刊文春デジタル」編集部/週刊文春デジタル)