あなたの飼い猫をはじめ、ネコ科の動物は、たいがい水に濡れるのが苦手だが（トラは別）、アフリカでは、2頭の兄弟ライオンが川向うに向かって泳ぐなか、ゴールを目前にして水中からワニが現れた！
ライオンの兄弟が仲良く泳ぐ珍しい姿が目撃されたのは、ボツワナとナミビアの国境を流れるリンヤンティ川だ。2017年4月、サファリキャンプに参加中の観光客のグループが、岸辺で水を飲む2頭のオスライオンに遭遇した。
どちらも年若い兄弟だとみられたが、突然、たてがみが短い弟の方が岸辺に下り立ち、ボートの前を横切るように、向こう岸を目指して泳ぎだした。
後に取り残された長いたてがみを持つ兄は、しばらくの間、水の中に入るのをためらっていたが、意を決して、弟に続いた。
2頭は水しぶきをあげることもなく、ボートの前を静かに横切って向こう岸へ。見学者は「ライオンって意外と泳ぎがうまいんだ」などと感心しながらカメラを構えていたが、ゴール直前になって、悲鳴が上がった。生い茂る草の中からワニが飛び出したのだ。
いくら泳ぎがうまいとはいえ、ライオンは陸の王者だ。水の中でワニにかないっこない…と、その場にいた全員が絶望的な気持ちで猛獣同士があげる水しぶきを見守っていた。
「どちらもワニに殺されてしまったのだろう」と思った瞬間、川向うから1頭のライオンがUターンして戻ってくるのが見えた。どうやら兄ライオンによって窮地を救われた弟のようだ。
その後、弟ライオンは岸辺でしばらくの間、兄が戻ってくるのを待っていたが、途中でメスライオンを発見。兄弟の行く末を心配していた見学者の前で、なんと交尾を始めたと言うから驚きだ。
弟を助けた勇敢な兄はその後、ナミビア側の川のほとりで無事でいるのが見つかった。しかしワニとの遭遇にほとほと懲りたとみえて、半日以上その場で立ち尽くしていたという。弟は恋人を見つけたと言うのに、兄貴の心情いかばかりか、というところだが、この勝負、あえて勝ち負けをつけるなら、やはり弟ライオンに軍配が上がる。