第7世代への要望を不躾に言ってみる マツダ藤原副社長インタビュー(5)

・CASEは「独自部分だけでも、クルマ1台分の開発費がかかってます」 マツダ藤原副社長インタビュー(1)

・為替は「北米に工場を造っても、ほとんど変わらない」 マツダ藤原副社長インタビュー(2)

・ラージの遅れは「7世代の技術を現行世代に入れる。もうそれをするしかない」 藤原副社長インタビュー(3)

・「マイルドハイブリッドの効果はちゃんと出てます」 マツダ藤原副社長インタビュー(4)

池田 さて、マツダの戦略についてはいろいろとお話を伺ってきました。ちょっとここからは話が変わって、第7世代のMAZDA3とCX-30に乗って感じたことについて、藤原さんにお伺いしたいです。ちょっと失礼な物言いもあるかもしれませんけど。

藤原 (笑)。はいどうぞ。

池田 CASEにはとてつもなくお金が掛かっているという話を聞いた後に、いきなり直球でなんなんですが、第7世代はADAS(先進運転支援システム)が、ちょっとどうなんでしょうか。

藤原 前の世代のMAZDA6とか、CX-5のときにもあまりご指摘を受けたりしていないのですけどね。私も乗っていて、違和感がないと思っていたんですけど。

ADASはドングリの背比べから取り残された?
池田 ちょっと前まで、メーカーみんな横並びだったんですよ。だけどここ1年くらいで、ドングリの背比べを抜け出して、上手いメーカーが出てきちゃったんです。マツダは今、それにちょっとそれに取り残されていて、例えばクルコン(前車追従型クルーズコントロール)は、直前にクルマが入ってきたり、出てったりしたときの躍度(加・加速度)がちょっと高いんですよ。

藤原 どんな感じですか?

池田 自分で踏んでいるときだったら気にならない躍度でも、クルマに勝手にやられると、嫌じゃないですか。そこは多分、ドライバーの操作とクルコンの操作では許容値が違うんじゃないかなと。それと、ブレーキも制動開始までちょっと引っ張るんですよね。「おーっ大丈夫か?」て思ってから、かかるんですよ。いや確かに制動距離は足りているんです。距離的には遅いわけじゃない。気持ちの問題です。でも、ゆるやかな減速をもうちょっと手前で軽くかけ始めてくれれば「あ、ちゃんとクルマは状況をつかんでるな」と安心できるんです。こういうのは人間が操作するときとは違うと思うんですよね。機械がやることだから、認識してますよって伝えるクルマと人のコミュニケーションは大事です。

藤原 あー、先に信号を出さな、いかんな。

池田 そうなんです。そこは多分もう藤原さんには言っていることが……。

藤原 いや、分かります、分かります。はい、分かりました。

池田 反応が無いと信用できなくなっちゃう。

藤原 ちょっと頭で仕事をしているやつが多くて、体で仕事をしているやつが少なくなっている感じがするんで、そこは今ちょっと注意しているところです。そこはすぐ直させます。彼らは、頭で考えると、正しいことを言っているはずなんです。人間中心だ、こうなるべきだって言っているんですけど、さっき言われたように、(機械に)任せている限り、先に信号を出してOKっていうのを(運転手に)伝えてやるべきってあたりは、多分体でやっている連中から出てくる話なんですけど、それが多分うまくリンクしてないんです。だから、そこを今、注意しているとこなんですけど、分かりました。ありがとうございます。そこは直します。

池田 で、ステアリングアシスト。マツダではCTS(クルージング&トラフィック・サポート)っていうんでしたっけ? あれも、ちょっと基本が左に寄りすぎるんですよね。あれは多分、道路って左側のラインのほうが鮮明だから左見ちゃうのかもしれないんですけど、センターが取れない。ときどき、嫌だなと思うぐらい寄っちゃうんですよ。手放し運転をするわけじゃないですが、左に行こう行こうとするクルマを引き戻し続けなければならないんだと、何のためのアシストか分かりません。これは何とかしてほしいなと。

藤原 これも多分ロジックですね。頭がやってんですよね。だから、そっちのほうがってやっているんですよ。だから、それは多分、走ってみて体で感じているやつが少ないんでしょうね。感じる能力はあるはずなんですよ、うちのあのメンバーだと。はい、すいません。

室内カメラで、ドライバーをモニターする未来
池田 あと時速60キロ以上でアシストが切れることについては、基本的には、GVC(Gベクタリングコントロール:タイヤの接地力を制御する機構)がすごくよくできていて、高速巡航の操舵(そうだ)は十分に楽だし、正確で気持ち良いので、むしろ変にステアリングを切られるよりは、いいのかなと思っています。ただ、例えば居眠りとか脇見運転とかのときに、ドライバー監視のカメラがあるからって全部任せられるのかと。やっぱり何かのときに、本当にどうしようもないときにはステアリングアシストが救ってくれることは必要なので、常時レーンキープするということではなくて、レーン逸脱の回避機能だけは、60キロ以上でもあったほうがいいんじゃないかなというふうに思ってます。

藤原 それは変えるつもりです。もう決めました。

池田 そういう意見が社内でもあったんですね。

藤原 それはやります。それ議論しました(笑)。ありがとうございます。

池田 室内カメラで、ドライバーをモニターするっていうのはとても重要で、実は昨日かな、ボルボの本国の安全技術ナンバーツーの人が来日してレクチャーしてくれたんです。飲酒であるとか麻薬であるとか体調の不良であるとか、いろいろな危険に対して次の安全のステージにいくには、ドライバーをモニターするしかないそうです。

藤原 そのとおりです。

池田 マツダもそこにちゃんと駒を進めたという意味では、あの機能の採用は、まさに正しいなと思っています。

藤原 ありがとうございます。あれはすっごい研究してますよ。あれはもう、人間のこういう動作はこういう状況だっていうのを、だいぶんつかみ始めてますし、それをこれからもデータと照らし合わせて検証していこうと思っているんですよ。

池田 あれモニターしているのは、視線ですか?

藤原 視線だけじゃなくて……。

池田 顔や首の動きとか。

藤原 顔、首の動きで見ていて、それで、こう動いたら危ないとか、だいぶデータをもらいながら研究してきたので。

池田 ちなみに、ボルボが言っていたのは、フロントカメラで前も見ているじゃないですか。前方で起こっているこういう状況には、ドライバーは当然反応しなきゃいけないってものに反応しなかったときには、アラームを出すって言っているんですね。

藤原 多分それってまだ試行錯誤の途中なんですね。どう対応するかっていうところで、動かすのか注意させるのかっていうとこが、多分皆さん、考え方がそれぞれ違う。多分われわれは警告を出すほうだと思います。人間をまず一番に起こすというか、気づかせる。それでもだめな場合には、もう自動運転に切り変えるとか。そこは一緒だと思います。

カーナビのライバルはスマホか?
池田 さあ、そしてマツダコネクトです。まだルートの組み立てが変なんですよ。それとマツダR&Dセンター、音声入力で入らなかったです。

藤原 へえ。すいません、ちょっとそこは確認してないんですけど、今回は随分よくしたつもりなんです(笑)。え?ルートがおかしい?

池田 私が使ったケースではルート選定がちょっとおかしかったです。知っている道ならそのルートは選ばないというところへ案内しようとします。それと、あとはアルゴリズムというか、例えば「ナビを操作する」って1回コマンドを言ってから、その次に出てくる候補とかが、やたら段階を踏むんですよね。これは例えば今、スマホに慣れた人たちなら「マツダR&Dセンターに行く」みたいな命令1回でいいはずなのに、何度もジャンルを選ばせたりエリアを選ばせたりとか、今の日常で使う道具の操作性となじまない。昔はCPUの処理速度が遅かったから、あんまり多くのデータの中から選びたくなかったのでしょうけど、今の処理水準だったら、スマホのCPUでも一発でできちゃうわけですから、そこの段階はあんなに踏まないでいいんじゃないでしょうか。

藤原 分かりました。今のは多分、競争相手をスマホと思ってないからですね。池田さんの中では競争相手がスマホなんですよ、比較の物差しが。でも、われわれ多分それって昔ながらの自動車のナビとして見ているから。

池田 むしろ伝統的な、やり方ですかね。

藤原 そうそう。その世界ではいいじゃん、よくなったよねって見ているんですね。分かりました。すごくいい指摘だと思います。今度、使おう。

池田 トヨタは今回、もうナビをほぼスマホに明け渡しかかっているじゃないですか。アプリを車載ナビとして使う。

藤原 LINEとかね。

池田 Apple CarPlayとAndroid Autoとかもです。

藤原 あれは良いんですか?

池田 現状で良いかどうかは、分からないんですよ。まだダメなところもあります。

藤原 (笑)

池田 ただ、長期的に見て、これからああいうふうにスマホとアプリが使われるとなったら、スマホの機能やアプリがどんどん充実してくるはずです。向こうがイナゴのように群がって、オープンマーケットで開発してくるものと、組み込みで戦い続けるのは、ちょっと現実的ではないかなと。だから、むしろナビ部分については、ある程度明け渡してしまったほうがよかったりするかもしれません。

藤原 今回、CarPlayとAndroid Autoは使えるようにしたので、それを今つないでもらえればというところで、多分われわれがエクスキューズしてんですね。だからそこは、ナビをやるならスマホと戦えるようにしなくちゃいけない。もしくは、極端にいったらあきらめるかっていうことでしょうね。はい、分かりました。ありがとうございます。

池田 そんな気がします。リソースは限られているのだから、むしろマツダでないとできないところにもっと注力することを考えた方がいいのかもしれません。マツダコネクトは、ただでさえ今、まだ色眼鏡で見られているところなので、戦いは厳しいかもしれません。

藤原 分かりました。

さて明日5日掲載の次回はいよいよ最終回。「ただのクルマ談義」の予定です。

(池田直渡)